第63話 ページ23
第63話
「まあ、お互い好きならするんじゃねぇか?」
恋愛なんて私には無縁の話。
同い年の子達や私より年下の子達でもするんだろうけど、経験皆無の私にとっては大人の世界に思えてしまう。そういうのは何も知らない、興味もない。
だからほんの冗談交じりで、なんの企みもなく私は焦凍さんに向かって口を開いた。
「恋人じゃなくてもいいなら、焦凍さんもキスとかした事あったりするんですか?」
冗談だったとは言え、これは流石に無粋な質問だっただろうか。
今まで人とあまり関わって来なかったから、自分で言うのも何だけどそういう事には疎い方だ。多分、思った事は相手を不快にさせる内容じゃなければそのまま言ってしまうタイプの人間。
『すみません、冗談です』と言おうとしたが、焦凍さんを見て私の口が閉ざされる。
焦凍さんが…何故か固まっていたから。
「焦凍さん?」
「…!」
私が首を傾げながら声をかけると焦凍さんはハッとして「悪ぃ、そうだな…」と続ける。
えっ、答えてくれるの?
「………1回だけ、ある」
手に持ったタオルを見ながら焦凍さんが小さな声で答える。まさか答えてくれるとは思わなかった、質問したのは私だけど…なんていうか、律儀な人だ。
でも焦凍さんはした事があるのか。そりゃ焦凍さんは大人だし色々人生経験も私なんかより豊富なんだろう、と関心してしまう。
「やっぱり、大人の世界って感じですね」
「お前は…そういうの」
「まさか、ないですよ。私には無縁の話です」
「………………そうか」
不自然な間があったものの焦凍さんは短く答えると、またタオルで髪を拭き始めた。
それにしても…
「焦凍さんって律儀ですよね」
「そうか?」
「でも…あなたのそういう所、私は好きです」
律儀が行き過ぎて天然な所もあるけど。
そういう意味で言うと焦凍さんは何故か髪を拭いていた手をピタリと止める。あれ、何か変なこと言っただろうか。
悪い意味じゃないから思った事を口にしたけど、どこか不愉快に感じる所でもあったのかな。よく分からないまま『すみません』と私が口を開くよりも先に、焦凍さんの小さな溜息が聞こえた。
「………お前の言葉って、たまに怖いな」
「え…?」
「いや、こっちの話だ」
焦凍さんの言葉の意味が分からなくて、私は首を傾げることしか出来なかった。
.
1321人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
風鈴 - 誤字ってますが気にしないでください。「いままだ」になってますが正しくは「いままで」です!すいません。 (2021年11月27日 23時) (レス) id: 19b3aa7f76 (このIDを非表示/違反報告)
風鈴 - めっちゃ好きです!イラストもとても好きです!!何時もつづきをわくわくしながら見させてもらってます。あと、他の作者様に失礼なのですが、いままだ見て来た小説でこの作品がいちばん好きです。勿論他の方の作品も大好きです!長文失礼しました。 (2021年11月27日 23時) (レス) id: 19b3aa7f76 (このIDを非表示/違反報告)
花 - シリアスの中にも"愛"が詰まってる感じで良き (2021年5月19日 20時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
ひめたん - 好み過ぎる (2018年9月5日 23時) (レス) id: 6ef00c8f07 (このIDを非表示/違反報告)
ららら(プロフ) - 絵が、!!!すごい好みです!!!漫画書いてほしいくらいです、、笑頑張ってください!! (2018年6月18日 17時) (レス) id: 67811c0872 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:NAOKI | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時:2018年6月3日 18時