第５５話 ページ15
第５５話
あの事件から数日が経った10月中旬、私は仕事が休みだという焦凍さんと一緒に街へ出ていた。というのも、あの事件で携帯をなくしてしまい焦凍さんに『一緒に買いに行こう』と言われたのだ。
正直携帯なんてなくても私は困らないから『いらないですよ？』と言ったが『直ぐ連絡出来る手段がねぇと心配だからな、俺が』と言われた。
あって困るものでもないから結局買いに来たのだが、焦凍さんと２人で休日に出かけるのは久しぶりな気がするな。
携帯も無事に買い終わり、新しい携帯を握りしめながら「あの…ありがとうございました」と言うと焦凍さんは横目で私を見る。
「なんか他に欲しい物とかあれば言ってくれ」
「いえ、特には…」
「………何でもいいんだぞ？」
「本当にないので大丈夫ですよ」
せっかく焦凍さんは仕事が休みなんだから、帰ってゆっくりして欲しい。そう思っていると焦凍さんが徐に立ち止まった。
どうしたんだろう、と不思議に思い私も立ち止まって振り向く。すると焦凍さんは少し難しそうな顔で頬を指で掻きながら目を逸らした。
「お前が帰りたいならそれでもいい。けど、久しぶりに２人で外出したのに直ぐ帰るのは…なんか勿体ねぇなと思って」
「……焦凍さん」
「だからもう少し、お前と何かしておきてぇ」
そっか……こんな些細なことでも、焦凍さんは私との時間を大切にしようとしてくれてるんだ。何だか嬉しくて胸がじんわりと熱くなる。
ゆっくり焦凍さんに手を伸ばし彼の服の裾を掴むと、私は恐る恐る口を開いた。
「じゃあ…もう少し、歩きましょうか」
私がそう言うと焦凍さんは薄ら微笑みながら「ああ…」と頷き私の手を握る。相変わらず暖かくて優しくて、安心できる手。
多分私は、この手が好きだ。人々を守るヒーローの手、あの日私に差し伸べてくれた手、そしてもう何度も私の頭を撫でてくれた手。
「焦凍さんは欲しい物とか、行きたい所とかないんですか？」
「俺の行きてぇ所か……どうやってお前を引き止めるかばかり考えてて、そういうの考えてなかった」
「私のことばかりじゃなくてちゃんと自分の事を優先してくださいね。焦凍さんの行きたい所なら、私も行きたいって思うから」
「それは俺もなんだけどな。お前の行きてぇ所には、俺も行きてぇって思う」
暖かい時間も、暖かい言葉も
この人と居ると沢山貰えて…
やっぱり私は、恵まれている。
．
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風鈴 - 誤字ってますが気にしないでください。「いままだ」になってますが正しくは「いままで」です！すいません。 (2021年11月27日 23時) (
レス) id: 19b3aa7f76 (このIDを非表示/違反報告)
風鈴 - めっちゃ好きです！イラストもとても好きです!!何時もつづきをわくわくしながら見させてもらってます。あと、他の作者様に失礼なのですが、いままだ見て来た小説でこの作品がいちばん好きです。勿論他の方の作品も大好きです！長文失礼しました。 (2021年11月27日 23時) (レス) id: 19b3aa7f76 (このIDを非表示/違反報告)
花 - シリアスの中にも"愛"が詰まってる感じで良き (2021年5月19日 20時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
ひめたん - 好み過ぎる (2018年9月5日 23時) (レス) id: 6ef00c8f07 (このIDを非表示/違反報告)
ららら(プロフ) - 絵が、！！！すごい好みです！！！漫画書いてほしいくらいです、、笑頑張ってください！！ (2018年6月18日 17時) (レス) id: 67811c0872 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2018年6月3日 18時
