なな ページ8
バシン……バシン………とボールが叩きつけられる音だけが体育館に響く。
壁際でボールと戯れているAは、不思議とその状況を受け入れていた。
寧ろAとしては、それよりも遥かに不思議なことがあった。
それは自分が練習着とシューズを持ち歩いていたこと。
特に意識して持ち歩いていた気は一切ない。
なんでこんなに自分は荷物が多いのだろう、と思ったことも無い。
だというのに、練習着だけでなくシューズまでも持ち歩いていた。
自分の事とはいえ、不思議で仕方がない。
「…無意識って、こういうことか」
手首のスナップをきかせてボールを回せば、ボールはシュルっと音を立ててAの思う通りに回転する。
両手で床に向けてボールをつけば、これもまたAの思う通りに跳ね返ってくる。
力加減もコントロールも完璧だ。
体がしっかりと覚えている。
ほっと息をつきながら、Aはゆっくりと顔を上げた。
ずっとボールに注いでいた視線を、影山とその奥にあるネットへ向ける。
サーブを打ち込むその背中を見て、意外と平気かもしれない、なんて微笑んだその直後のことだった。
Aの全身が、まるで石にでもなったかのように動かなくなったのだ。
上手く持つことの出来なくなったボールがAの手からこぼれ落ちていく。
タン、タン、と音を立てて転がっていくボールを視界の端に捉えた影山がAの方へと振り返れば、Aは小刻みに体を震わせていた。
「…網張さん？」
「ぁ、や、おれ」
カタカタと全身を震わせ始めたAを前にした影山は慌ててボールを手放し駆け寄っていく。
落ち着かせようと肩に手を置けば、見た目以上に震えていてさらに影山を驚かせた。
「っ大丈夫ですか！？座りましょう、ゆっくりでいいんで…」
心配そうにAの顔を覗き込みながらそう誘導し、できる限りの優しい手つきでAを座らせる。
ゆっくりではあるが、Aは影山の誘導に従って腰を下ろした。しかしその体は未だ震え続けている。
「…一体、なにがあったんですか」
「ぇ…」
「練習試合に居なかったの、偶然じゃないんですよね」
「…」
「話したくないならいいんですけど、その、」
気まずそうに視線をさまよわせながら言葉を探す影山を見て、Aはようやく落ち着きを見せ始めた。
純粋な気持ちで誘ってくれた影山にこんな姿を見せて気にするな、なんて無理な話だ。
「…ちょっと長くなるけど、いい？」
「っす……お願いします」
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ゆき(プロフ) - 赤憑さん» うわー！ありがとうございます！直しときます！！！ (4月28日 17時) (
レス) id: 1fa030afc2 (このIDを非表示/違反報告)
赤憑(プロフ) - 面白い作品ですね！ところで…あの...ろく影山sideの話のところの西谷の漢字が西ノ谷になってます💦 (4月28日 13時) (レス) @page7 id: 805737b448 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 天野さん» ずっと！？ありがとうございます！！今度は最後まで書き切りたいと思ってるので気長にお付き合いくださいませ！！！ (2023年3月29日 10時) (レス) @page26 id: 1fa030afc2 (このIDを非表示/違反報告)
天野(プロフ) - 更新ずっと待ってました！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！ありがとうございます！！！！！！！！！！！！！！ (2023年3月29日 8時) (レス) id: c3ca8d9a5e (このIDを非表示/違反報告)
八雲 - すっごい大好きです頑張って下さい!!!!!!!!!! (2021年8月22日 0時) (レス) id: 34dfb00aa4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆき | 作成日時：2021年5月21日 18時
