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さん 夢主side ページ4

瞼の裏に描くのはかつて駆け回っていた舞台。

6人で守るコート。

自分の背よりも高いネット。

そしてネットの向こうにいる、ライバルたち。



打ち込まれたボールを仲間が繋ぎ、つい先程まで話していた及川によって、トスが上がる。
そのボール目掛けて飛び上がり、腕を振り下ろす。
叩きつけるボールの感触。
ぶち抜いた壁。

あぁ、楽しい。
バレーがしたい。

そんな思いが俺の心を埋めつくそうとしたその瞬間の事だった。



あれ、どうやって降りるんだっけ。

飛び上がって、打って、その後は?


頭に響き渡る、鈍い音。
何かが弾け飛ぶような音
もう痛みは引いたはずの右膝が、ジンジンと痛みを主張し始める。

堪えきれなくなってパッと瞼を持ち上げれば、一切動いていないはずなのに息が荒れ始める。
じわりと額に浮かぶ嫌な汗は拭っても拭っても吹き出してくる。


あぁ、今日もダメだった。


運動ができない訳では無い。
入念にストレッチさえすれば部活だって再開しても大丈夫だと医者からの許可を得てる。

それでも復帰していないのは、俺の中に焼き付いた景色。
大好きな頂の景色のはずなのに、その頂の景色は美しいままでは終わらせてくれない。

降りられないのなら、飛ぶことも出来ない。

もし同じ怪我をしたらその時は、歩くことすらままならないかもしれない。
あの痛みをもう一度味わうかもしれないと思うと、どうしてもバレーに歩みよることが出来ない。
嫌な汗が収まる頃には冷たい風によって体が冷え、ふるりと身体が震える。


バレーは好きだ。

大好きだ。

今だって、バレーがしたい。

もう一度コートに立ちたい。


だけど、降り方がわからないんじゃあ俺は飛べない。

もう一度同じ怪我をしてもいい、歩けなくなってもいいから、なんて潔い思考は持ち合わせていない。


バレーはしたい。

でも怪我はしたくない。

そんな欲深い俺が最後に選ぶのは、自分なんだ。






「…ごめん、ごめんな、及川、岩泉…

みんな…ごめん」

よん→←に



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ゆき(プロフ) - 赤憑さん» うわー!ありがとうございます!直しときます!!! (4月28日 17時) (レス) id: 1fa030afc2 (このIDを非表示/違反報告)
赤憑(プロフ) - 面白い作品ですね!ところで…あの...ろく影山sideの話のところの西谷の漢字が西ノ谷になってます💦 (4月28日 13時) (レス) @page7 id: 805737b448 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 天野さん» ずっと!?ありがとうございます!!今度は最後まで書き切りたいと思ってるので気長にお付き合いくださいませ!!! (2023年3月29日 10時) (レス) @page26 id: 1fa030afc2 (このIDを非表示/違反報告)
天野(プロフ) - 更新ずっと待ってました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ありがとうございます!!!!!!!!!!!!!! (2023年3月29日 8時) (レス) id: c3ca8d9a5e (このIDを非表示/違反報告)
八雲 - すっごい大好きです頑張って下さい!!!!!!!!!! (2021年8月22日 0時) (レス) id: 34dfb00aa4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2021年5月21日 18時

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