にじゅうに 夢主side ページ23
「…ふ、っあはは!」
久しぶりの体育館。
久しぶりの2人の空気。
あぁ、俺は、この場所が好きだ。
この空気が大好きだ。
俺を安心させるためとはいえまるでサッカー漫画のような言葉を放った及川は岩泉にどつかれて文句を言っている。
キャンキャンと子犬のように騒ぐ姿が凄く懐かしくて、俺は思わず声を上げて笑った。
それから及川の手に納まっているボールに触れた。
ボールに触れるのは、影山に会った時にだって出来たこと。
あの時だって、ボールの扱い自体は難なく出来た。
あの時と同じようにボールを回したり、床に叩きつけたりしてみても思った通りに動くだけで何の恐怖も違和感もない。
「…平気?」
心配そうに投げかけられた言葉に顔をあげれば、いつの間にか言い合いを辞めていた及川が不安げな顔で俺を見つめていた。
岩泉はじっとただ見つめているだけで、何も言わない。
…影山から詳しく聞いているのだと思っていたけど、そんなに聞いてないのか。
「大丈夫。ボールに触ること自体はあの時も平気だったんだ
ただこのままコートを見ると…」
チラリと視線だけコートに向けてみれば、背筋を駆け巡る不安。
やっぱり、コートにはまだ戻れそうにない。
つぅ、と伝わる冷や汗から逃れるように2人へと視線を戻せば、岩泉がぐっと眉間に皺を寄せた。
「…まぁこんな感じ」
2人に見えるように手のひらを差し出す。
見てわかるぐらいには震えてる。
これを見せるのは2人に必要以上に深刻に捉えさせてしまうかもしれないけど、これが俺の現状であり克服しなければならないもの。
これがどうにかならなければ、どれだけ気持ちが追いついてもコートには立てない。
小脇に抱えていたボールを両手で抱え直そうと差し出していた手をボールに寄せると、ギュッと手を握られた。
包むように、大切なもののように握られた手を辿れば、そこには苦しそうな顔をする及川がいた。
「なんて顔してんだよ」
「っだって、こんなに震えて…!」
「そうなるって分かってて戻ってきてもらったのは俺らだろ
んで、見てなきゃ大丈夫なのか?」
「ん、今はもう」
大丈夫だろ?と及川の目を見れば、及川は確かめるように俺の手を握ってから小さく頷いた。
そっと離された手を再びボールに寄せて、両手で持ち直す。
…大丈夫。時間はある。
少しずつ、確実にいこう。
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ゆき(プロフ) - 赤憑さん» うわー!ありがとうございます!直しときます!!! (4月28日 17時) (レス) id: 1fa030afc2 (このIDを非表示/違反報告)
赤憑(プロフ) - 面白い作品ですね!ところで…あの...ろく影山sideの話のところの西谷の漢字が西ノ谷になってます💦 (4月28日 13時) (レス) @page7 id: 805737b448 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 天野さん» ずっと!?ありがとうございます!!今度は最後まで書き切りたいと思ってるので気長にお付き合いくださいませ!!! (2023年3月29日 10時) (レス) @page26 id: 1fa030afc2 (このIDを非表示/違反報告)
天野(プロフ) - 更新ずっと待ってました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ありがとうございます!!!!!!!!!!!!!! (2023年3月29日 8時) (レス) id: c3ca8d9a5e (このIDを非表示/違反報告)
八雲 - すっごい大好きです頑張って下さい!!!!!!!!!! (2021年8月22日 0時) (レス) id: 34dfb00aa4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年5月21日 18時