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豹馬を拒まなかったことが、私の気持ちの答えなら。
それは彼を好きだということになる。
もし
思ってたのと違うって、捨てられない？
土壇場になって、薄れかけてた恋愛への苦手意識が蘇る。
黙ったままの私の手を、豹馬の大きな手が包み込んだ。
｢今、少しでも俺を好きって気持ちはある？｣
親が泣いてる子供を慰めるような優しい声に小さく頷く。
傷つくのが怖くて、好きにならないよう気をつけていた。
だけど、前に進もうと決めて。
そしたら豹馬の優しさに気づいてしまった。
誰よりも私を見てくれてるとこ。
どんな私も受け入れてくれるとこ。
口だけじゃなくて、行動で好きを伝えてくれるとこ。
私以上に、私を大切にしてくれるとこ。
彼の優しさを独り占めしていたい思うようになっていた。
｢その気持ちを思い留ませてるものは何？｣
バスケの時もそうだった。
豹馬の言葉は、私の心に絡んだ糸を丁寧に解いてくれる。
｢もし、豹馬の好きに応えたら、豹馬は満足して離れていっちゃう気がして…｣
｢今までがそうだったから？｣
また少し頷くと、握られていた手をふいに引っ張られた。
引き寄せられて私の頬が豹馬の胸にあたった。
｢まだ俺のこと甘く見てんのな｣
｢…なにそれ｣
｢付き合ったら、今以上に好きになる未来しか見えねーのに｣
私を抱き締めたまま、豹馬は拗ねたような声色で言う。
｢とりあえずキスマつけたのはごめん、やりすぎたかなとは思ってる｣
｢うん、やりすぎ｣
お前も嫌がらなかったじゃん、と笑っているのが体越しに伝わる。
彼の腕の中はとても心地よかった。
｢付き合うのは、もうちょっとだけ待ってほしい｣
｢うん、わかってる｣
｢その時は、私が豹馬に告白するから｣
私なりの誠意と決意表明。
豹馬の私を抱き締める力がぎゅっと強くなった。
｢いつでも待ってる｣
この日のことを、私は決して忘れないだろう。
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作者名：にいな | 作成日時：2023年1月17日 18時
