その天才、恋愛初心者につき。【凪誠士郎】

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彼女の両親は御影コーポレーションに投資をしていて、玲王の家族とも関わりがあった。


だからこその噂の浸透性。


学校への資金提供もしていたため、先生達も頭が上がらなかった。


玲王が付き合っているというのは彼女の嘘だと判明したが、それは全てが終わった後だった。


｢玲王君に近づかないでって、何度言えばわかるの？｣


私から接する回数は減らせても、事情の知らない玲王はお構いなしに話しかけてくる。


兄妹同然で育ってきて、今更関係をなくせなんて無理に決まってるのに。


いつまでも反抗的な態度を取る私に痺れを切らしたのだろう。


2人きりの教室で、彼女は筆箱からカッターを取り出した。


｢…何するつもり？｣


カチカチ、と刃を繰り出す音が響く。


彼女は緊張した様子で刃を見つめ、そして、


｢きゃあぁぁ！！｣


自分の腕に突き刺した。


こんな漫画や小説みたいなこと、本当にあるんだ。


血を流す彼女を目の前にして、冷静でいられる自分に驚いた。


駆けつけた先生や生徒に囲まれ、この出来事はすぐに学校中に広まった。


皆が誰を信じるかなんて明白で、私は2週間の謹慎処分を受けた。


謹慎中、家にきた玲王にはこの事件以外にも今まで受けた嫌がらせなど、全てを打ち明けた。


｢守ってやれなくて、ごめん｣


泣いている玲王を見たのは、後にも先にもこの1回だけだった。

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