お隣さんが不審者なんですが【fj】 (ページ16)

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お隣さん、十四日目。ページ16

「……死ぬ……」

あいつら社畜……じゃなくて社員をなんだと思ってやがる。私一体何時間労働させられたんだ？
労働基準法見て出直してこいやバーカ。

「……なんて言えないしなぁ」

それに今の仕事は長く続けてるし、辞めようにも辞められない。
うちの会社が俗に言うブラック企業とかいう代物にならないといいけど。

そんな事を考えながら、ふらつく足でキッチンに向かい、買ってきたお弁当をレンジで温める。
ついでに買った緑茶のペットボトルを、居間の机に乱暴に音を立てて置いた。

温め終わったことを知らせる音が鳴り響き、お弁当を取り出して机に置いた。

「やっと飯にありつける……いただきまーす」

時計を見てみれば、日付が変わっている。
残業代が出るから残業してるけど、出なかったら何を言われようと定時で帰っていた自信がある。

少しぬるいくらいのお弁当を口に含み咀嚼する。
コンビニ弁当には、なんとも言えない美味さがあると思うのは私だけだろうか。

完食し終え、私は異常な程の睡魔に耐えて歯磨きをし、ベッドに倒れ込んだ。
それからの記憶は、朝まで一秒たりともなかった。

翌日は日曜日で休日だった。
このままゆっくり寝ようかとも思ったが、案外目が冴えてしまい寝られそうにない。
私はゆっくり体を起こし、顔を洗いに行った。

髪をなんとなく整えて適当に結び、服装も整えずにそのまま朝ご飯の支度をしていると、呼び鈴が鳴った。

「はいはい、今出ます」

ガチャッとドアを開けてみれば、そこにいたのはフジ君だった。

「あっ、え、フジく……ん……」

これは、やらかした気がする。
なんでこんなだらしのない格好で出てったんだ。
せめてメイクのひとつでもすれば良かった。

「……？あ、Aちゃん、急に押しかけてごめんね」

「あぁ、いいのいいの。んで、どうしたの？」

女性の笑顔は最強のメイクだと思うんだ。私は。
だから私はとにかく笑っとくぞカカロット。
そんな気分で聞き返せば、フジ君は急に深刻そうな表情になった。

「……ちょっと、Aちゃんに話があって」

「話……？」

こんな深刻そうな顔って、一体どれだけシリアスな話なんだろう。

「Aちゃんが忙しかったら、また今度話させて」

「いいよ」

食い気味に答えれば、フジ君は不安げに俯かせていた顔を上げた。

「私今日休みだし。話、聞くよ。上がって」

そう言って、私はドアを大きく開けた。