18 ページ20
⁻
吸血鬼と死神の友好関係はそれからも続き、葛葉はすっかり大人の姿になった。数10年経ってもおお互い姿が変わらないのは、人間ではないからだろうが。
夏翠は葛葉を可愛がり、葛葉は夏翠を尊敬していた。
「なぁ、夏翠の鉄パイプって何に使うの?」
「今更?これは魂取るのに使うんだよ。本だと鎌を持ってたりするけど、俺はこれが好き」
「ふーん。…今日も散歩行く?」
「いいね、昨日よりも遠く行ってみるか」
彼らが会って話すときは、いつも少し遠出をして知らない土地を探していた。今日も新しい土地を探そうと、葛葉は羽を広げた。
「昨日は南に行ったから、今日は北に行くか」
ふわりと浮かんだ葛葉を追うように、夏翠もふわりと浮かぶ。葛葉の白い髪と、夏翠の黒い尻尾がゆらりと揺れた。
「死神になってからも人生なんどうでもよかったけど、今結構楽しいかも」
「俺と会ったからだろ」
「少し前までガキだったのにな」
「お前が大人だったんだよ」
風を感じて大空を飛びながらそんな会話を繰り広げる。種類の違う魔族が集うことは珍しくもないが、数10年も関係が続いているのは珍しいことだろう。それだけ、二人の間には絆と呼ぶにはあまりに深すぎる関係ができていた。
「俺、お前の夢叶えるまで絶対お前の傍離れねぇわ」
そんな葛葉の言葉を、夏翠は信じていた。彼となら、自分の夢をかなえられるかもしれない。
「ごめん、俺、人間界行くことになった」
それから数年後、信頼する彼にそう言われるまでは。
⁻
347人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ヨッコラセ | 作成日時:2022年9月19日 20時