Angel of Death (ページ18)

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子供と大人が出会って数日。夏翠は葛葉の屋敷に近づくことはなかったが、葛葉は夏翠に会いに行っていた。迷子になって泣いていたあの場所。川が近くにある、小さな林へ。

「夏翠！」

今日も今日とて向かえば、川に両足を入れて進んでいる男が見えた。葛葉は急いで駆け寄り、その大きな背中に抱き着いた。

夏翠はよろけもせずに、ひょい、と葛葉を抱き上げた。

「よう、チビ」

「チビじゃない」

「お前の名前長いんだよ」

当時はまだ、葛葉、という名前を持っていなかった。家族からの愛称はあったものの、それを教えればよい、という思考にはまだ至らないほど幼かった。

長い、と言われれば、少し落ち込んだように俯く葛葉の頭を撫でれば、夏翠も少し俯いた。

「葛葉」

「え？」

「お前に名前をやる。俺はそう呼ぶからな」

「ふーん」

「もっと喜べよ」

「ラグーザの方がかっこいい」

「文句言うな」

魔界に居た頃、葛葉と呼ぶのは夏翠のみ。人間界に来るまで、その名前は二人だけのものだった。

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