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夜8時55分。配信部屋の椅子に座って、待機所で溢れかえるコメント欄を眺める。



心臓はドキドキと高鳴り、手には汗が。



隣には閃ちゃんが居てくれるものの、やはり不安なものは不安だ。





「大丈夫」





再びそう声をかけてくれる優しい男は、今の状況をどう受け止めるのか。



5分が過ぎ、俺はマイクに口元を寄せた。





「あー、…あー、聞こえてる?」





>聞こえてるよー
>おけ
>声小さいね





「声小さい?…ああ、まぁ、うん」






俺が話し出すと、コメント欄のスピードは上がっていく。



ふう、と息を吐き心を落ち着かせて、再び口を開いた。





「まずは、3日間何も言わずに休んでてごめん。今日はゲームじゃなくて、ちょっと報告が」





>男の話か
>例の件ね





「そう、例の件。まぁ、知ってる人がほとんどだと思うけど、…、……あのー、」





言葉が詰まる。



別に何も悪いことをしているわけでもないのに。



ぎゅう、と拳を握ると、隣から声が聞こえてきた。





「初めまして、葛葉さんとお付き合いさせていただいてます」



「…え」





>彼氏きちゃ
>オムライスの人だ!
>やっぱ男か〜





俺が喉から捻り出せなかった言葉を、さらりと言ってのけた。



ぽん、と頭を撫でられ、ほら、と背中を押される。





「…俺は、知っての通り男と付き合ってる。イメージと違うとか、あると思うけど、俺はこのまま活動を続け、た、い…」





普段の俺ならこんなに言葉には詰まらないのに。なんて言えば、と必死に考えながら話すことがこんなに難しいなんて。



コメント欄は賛否両論、でも、こういう時はマイナスな文字が目に入るものだ。





>いや、普通に男同士とかキモイでしょ





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作者名:ヨッコラセ | 作成日時:2022年9月7日 11時

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