過去◆2017 今日限定の恋人1 ページ23
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―――――2017年7月7日
私は二十歳を迎えた。
午前中は夏フェスに向けてのリハーサル。RIKUさんからは誕生日だしご飯でも〜なんて誘われたけど丁重にお断りした。
今日だけは絶対に誰にも邪魔されたくないの。
帰宅してすぐに服を着替えると丁寧にメイクを施す。鼻歌を歌いながらリップを塗り終えるとインターホンが鳴った。
ドアを開けるとケーキを顔の高さに持ち上げて笑う健太くん。
「早くない?」
「いや、だってAが慌てて帰ったからさ。俺も急がなきゃと思って」
健太くんはソファーに座るときょろきょろと部屋を見渡した。
「なんで、そんなに挙動不審なの」
「いや、変わってないなと思って。最後に来たの1年以上前じゃん?懐かしいなぁ」
優しく笑う健太くんの横顔をジッと見つめる。
もう健太くんの中では昔の思い出になってしまったんだろうか。
私はーー今でも健太くんを見つめるだけでこんなにも胸が高鳴るのに。
「…健太くん。今日だけ、恋人に戻りたいって言ったらどうする、?」
私の言葉に目を見開くと健太くんから笑顔が消えた。
「へへ、なんちゃって。冗談だよ、冗談!あ、なんか飲む?」
慌てて立ち上がると冷蔵庫を開けた。ひんやりと冷たい風に頭が冷静になっていく。
…何言ってるんだろう、わたし。
こうやって一緒に過ごせるだけで十分なはずなのに。
「ごめん、A。言い忘れてた」
真後ろから聞こえた声に慌てて振り返る。
ごめんって、なに?
やだ、怖いよ。聞きたくない。
不安げな私に健太くんはふわりと優しく微笑むと私を腕の中に閉じ込めた。
「二十歳の誕生日おめでとう。……A、好きだよ」
耳元で聞こえる健太くんの掠れた声。首筋に感じる健太くんの温もり。
ゆっくり体が離れると色気を含んだ目で私を見つめる健太くん。
「いいよ、A。今日だけ恋人に戻ろう」
健太くんの親指が私の唇をなぞるとどちらともなく目を閉じる。
離れていた時間を惜しむように何度も何度もキスを繰り返した。
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美紀(プロフ) - ランぺ大好きです最高ですコロナウイルスに気をつけてくださいね (2021年11月29日 17時) (レス) id: e19dcb272d (このIDを非表示/違反報告)
Lala(プロフ) - Megさん» コメントありがとうございます。表現を褒められるのとても嬉しいです!引き続き切なさ全開になりますが、これからも読んで下さると嬉しいです。更新頑張りますね。 (2021年3月11日 8時) (レス) id: 266b0fc261 (このIDを非表示/違反報告)
Meg(プロフ) - いつも更新されるたびに読ませていただいてます!切ない感じがとても素敵です!Lalaさんの表現する言葉って優しい感じがして好きです!これからも更新頑張ってくださいね! (2021年3月9日 19時) (レス) id: 9ec0205a78 (このIDを非表示/違反報告)
Lala(プロフ) - タムさん» コメントありがとうございます!直接的には繋がってはないのですがお酒を飲むとガードが緩くなる紅一点ちゃんというのを徐々に匂わせています。条件が出るようになった事件もちゃんと書くつもりですのでお待ちください。毎日チェックしていただき感謝です。 (2021年3月8日 15時) (レス) id: 266b0fc261 (このIDを非表示/違反報告)
タム(プロフ) - もしかしてお酒の条件って飲みかけのビールのお話と繋がってたりしますか!?毎日このお話が更新されてるかチェックするのが楽しみなぐらい面白いです!いつも更新していただきありがとうございます! (2021年3月7日 10時) (レス) id: 2c73cc4c7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Lala | 作成日時:2021年1月2日 10時