・・・ ページ19
・
｢もしかして……その女は暴力団に関わりのある一般市民ということなの？｣
頭を抱えて俯く福尾に近づく三嶋。
形勢逆転、今度は三嶋が福尾を追い詰める。
｢……言えない。｣
福尾の背中に壁が当たる。
｢……ていうか。やっぱ、気になってるじゃん。｣
三嶋の動きが止まった。
福尾は三嶋の肩に手を置き、とん、と押す。
不意打ちでよろめいた。
すとん、とデスクの上に乗る三嶋。
三嶋から見る福尾は、ますます大きくなっていく。
｢正直になってみなよ。俺にも、自分にも。｣
｢……。｣
福尾は三嶋の頬に手を添える。
三嶋はビクリ、と驚いたように見上げた。
｢……なにその顔、初めて見た。｣
福尾も物珍しそうに見つめる。
化粧っ気のない肌をなぞって、唇に触れた。
｢やめて。｣
三嶋はその手を取る。
｢やだ。｣
福尾はまた、手を取って抱き寄せた。
｢え、ちょっと｣
｢好きなんだよなあ。Aのこと。｣
｢……私はなんとも思ってない。｣
｢ほんとに？｣
｢ほんと。｣
福尾がゆっくりと離れる。
不服そうな顔で会議室の扉に向かった。
そして振り返る。
｢正直になれって、何年も前から言ってるじゃん。A、ほんとは哲也のこと好きなんでしょ。｣
一瞬で顔を真っ赤にする三嶋。
福尾は、ほら、と含む笑いをする。
｢こんなに分かりやすいのになんで哲也は気づかないかな。｣
ポリポリ、と頭をかく。
｢なんでこの前、私に好きとか言ったの。｣
三嶋は福尾に近づきながら言った。
｢だって好きだもん。好きな人に好きって言うの、当たり前じゃん。｣
｢はぁ……？｣
いつもの福尾の天然人たらし発言に項垂れる三嶋。
福尾は扉の鍵を開けた。
ドアノブに手をかける。
ガチャリ、と音が鳴って扉が開いた。
｢結局何しに来たの。｣
三嶋が言う。
福尾はヘラっと笑った。
｢挑発しにきたの。｣
そのまま会議室を出ていく福尾。
｢わ、福尾課長、もうおかえりですか。｣
ちょうど廊下にいた須賀が驚いて言う。
チラリと会議室の中に立っている三嶋を見た。
珍しくぼーっとしている三嶋を見て、目を逸らす。
｢うん。多分もう、ここには来ない。｣
｢え？｣
福尾はいつもの笑顔を見せて事務所の扉を開け、颯爽と出ていった。
｢Aさん、何があったんですか？｣
須賀が会議室に入る。
｢何も。｣
三嶋はニコリと笑う。
須賀にはそれが不気味に見えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 81人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ｭｩﾅ(プロフ) - てつやの漢字って徹也←こっちじゃないですか？ (2021年1月7日 9時) (
レス) id: 27390dba10 (このIDを非表示/違反報告)
かお(プロフ) - とっても面白いです！！ワクワクしてこれから楽しみです〜！！ (2020年8月9日 20時) (レス) id: ad4aaf0953 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たたしぃ | 作成日時：2020年8月2日 17時
