#１３２ ページ2
.
机の上には大量の空になった缶ビール。
そばの灯りだけ付けたままずっと机に寝そべりながら呑んでた。
写真の前に置いてある料理は減るはずもなく、冷たくなってる。
腕の隙間から時計をちらっと見るともう夜中の2時を回ってた。
「あぁ … やべ … 」
重い体を起こして立ち上がろうとすると腕の力がカクンと抜けて倒れそうになり、咄嗟に机に手をかけた。
彼女の写真立てがその反動で床に落ちて大きな音を立てた。
「っ！ごめんA … っ」
拾い上げて見てみると、割れてはなかったけど表面にヒビが入ってしまっていた。
「ごめん … 新しいの買ってくるから」
写真を指で撫でる。
「 … って、」
割れた破片が浮き出ていたのか、人差し指から赤い血が溢れ出す。
その溢れ出す血と見ていたら、一生に涙を溢れ出てきた。
ぽたぽたと写真に雫が落ち、声を殺しながら泣き崩れる。
「ずるいよA、なんで俺は … っ」
なんで俺にはAが見えないんだよ。
幽霊なんてものいるのかいないのか俺には分からないけど、そばにいてくれてるような感覚はある。
だから、ずるい。
Aには見えて、俺には見えない。
「不公平だろ … こんなの」
酔っぱらった勢いでこんなこと言う大人ってダセーって思ってたけど、今日から俺もその仲間入りか。
「俺ちょっと変わったかな … 」
その時ぶわっと風が吹き、空いていた窓のカーテンが大きく揺れた。
──────────『だらしなくなってきた？』
Aがそう呆れ笑ったような気がした。
「るせ … 自分だって俺に直接会えなくて泣いてんじゃないの」
ふふっと気付いたら笑っていた。
机に写真を置いて、どこに閉まったか忘れた絆創膏を探す。
「家のこと、もうちょっと聞いとけばよかった」
Aに任せっきりだったことを今反省する。
やっと見つけ出した絆創膏を貼って、バルコニーに出て空を見上げる。
「都会じゃ、ほとんど星は見えねぇんだよな … 」
白い息を吐いて、目を閉じる。
「届いてる … ？俺の歌 … 」
そう夜空に呟いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 489人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜天(プロフ) - 玲さん» コメントありがとうございます！こちらこそ、虹きみを読んで頂きありがとうございました！ (2020年1月6日 19時) (
レス) id: e2489fa5d7 (このIDを非表示/違反報告)
夜天(プロフ) - meiさん» コメントありがとうございます！顔面をそんなにして頂いたなんて…ありがとうございます！ (2020年1月6日 19時) (レス) id: e2489fa5d7 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - 久しぶりに沢山泣きました。こんな感動する小説を書いてくださりありがとうございました (2019年12月14日 4時) (レス) id: cd190f001a (このIDを非表示/違反報告)
mei(プロフ) - 泣きすぎて顔面とんでもないことになってしまいましたw感動しました！ありがとうございました！ (2019年11月25日 15時) (レス) id: fd406e97dc (このIDを非表示/違反報告)
夜天(プロフ) - PEANUTSさん» コメントありがとうございます！その言葉が何よりの励みです！ありがとうございます (2019年5月29日 18時) (レス) id: 11791f34cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夜天 | 作成日時：2019年5月19日 22時
