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朝の玲於が怖くて、その日はそれ以上話しかけることができなかった。
彼の方からも話しかけてくることはなく、不自然な距離感なまま放課後に。
とぼとぼと重いベースケースを背負いながら向かったのは町唯一の楽器屋。
「いらっしゃいませ … なんや、Aちゃん元気ないやん」
『数原せんぱ〜い … 』
泣き出しそうな顔の私を見て苦笑いするこの店でバイトしてる同校3年生の数原龍友先輩に無理やり相談。
でも話し始めると嫌な顔ひとつせずにちゃんと話を聞いてくれる。
それがこの人のいいところ。
抱擁感?っていうのかな …
お兄ちゃんみたいな感じがして、安心するの。
「いやぁ … それはどっちが悪いっていうか … 」
話し終えると腕をくんで首を傾げて唸り始めた。
『玲於が悪いんですよっ、私がPIERROT好きってわかってて言ってきたんだから!!』
「それも一理あるけどなぁ … Aちゃんも悪いで」
先輩の言い分はこう。
確かにPIERROTが好きな私にオーディションのことを伝えたら舞い上がるのなんて目に見えてたこと。
それを伝えたんだから玲於にも責任は有る。
でも、それで簡単にオーディションを受けようと決めた私も悪い。
ただPIERROTに会えるからって理由だけで本気でプロを目指してる子たちの邪魔をするのは良くない。
「芸能人に会えるからって、そんな軽はずみでバンドやろうなんて言ったら玲於だって怒るの分かっとったやろ」
先輩に言われてやっと頭が冷えてきた …
『ごめんなさい … 』
「謝るのは僕やないやろ、明日にでも直接ちゃんと謝らなあかんで」
乱暴に頭を撫でられて髪がボサボサになったのが目隠しになって、泣いてるのバレなかったかな … ?
ここはホントに心があったまる場所だなって再確認した。
でもこれで分かった、私。
『ねぇ、先輩。本気ならいいんですよね』
「え … あ、まぁ … そりゃそっちのが聞こえはえぇけど … 」
『なら本気でプロ目指しますよ、私』
口をポカーンと開けて、あわあわし始めた数原先輩がスネに椅子をぶつけて蹲る。
どうせPIERROTに会うなら、軽い気持ちで会いたくない。
真剣に音楽をやってるところを見てもらいたい。
『やるって決めたらやりますからね、私っ!!』
「やばいもんに火ぃ付けてしもた … 」
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夜天(プロフ) - 美心さん» 亜嵐くんの誕生日ですか!?羨ましい(泣)移行先でもよろしくお願いします! (2018年11月10日 9時) (レス) id: 11791f34cd (このIDを非表示/違反報告)
美心(プロフ) - 私は8月4日に参戦して来ました!更新頑張ってください! (2018年11月9日 22時) (レス) id: 3a297c68b9 (このIDを非表示/違反報告)
夜天(プロフ) - 佐野玲於の名無しのfanさん» ありがとうございます!まだまだ最後を迎えるのは先なので最後までどうかお付き合いください! (2018年10月16日 7時) (レス) id: 11791f34cd (このIDを非表示/違反報告)
佐野玲於の名無しのfan(プロフ) - オチが気になる〜!!読み終わったとき心臓がキュンキュンします!続き頑張ってください! (2018年10月16日 0時) (レス) id: 24c1463825 (このIDを非表示/違反報告)
夜天(プロフ) - あゆんさん» ありがとうございます!これからもきゅうってさせちゃいます!! (2018年9月30日 6時) (レス) id: 11791f34cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜天 | 作成日時:2018年9月10日 23時