純情不協和音《RYOTA + REO》

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《音》というモノはそこら中に転がっている。









踏切の音。



電車が走る音。



自転車のブレーキの音。



スマホの着信音。



みんなの喋る声。









そして …



私のイヤホンから流れる音楽。









昨日発売した大好きなバンドの新曲を聴きながら登校する朝。



もう今にも叫びたいぐらい心が躍る。



鼻歌混じりでリズミカルに歩いてると後ろから片方のイヤホンを取られた。









｢あぁ … 新曲か｣



なんの迷いもなく取ったイヤホンを自分の耳に当ててる佐野玲於。



『私の至福の時間を邪魔しないで！！』



イヤホンを取り返してベーッと舌を出して追い払う。



少し離れてから背負っていたギターケースから何かぺラッと紙を取り出して私の前にチラつかせる彼。









こういうところが腹立つ …









『 … 何よ、それ』



「お前に朗報」



『だから見せなさいって … ！』



わちゃわちゃ揉み合ってるうちに私の背負ってるベースケースが彼の頭に直撃。



『あ … ごめ … っ』



ギリッと一気に機嫌の悪そうな表情に変わった玲於は、首にかけてたヘッドホンをし直してそのまま学校へ1人で歩き出した。









高２で同じクラスの佐野玲於はギターをやってて、どこかのバンドに所属して活動してるみたい。



でも私は彼の音を聞いたことがない。



練習してるところも、どこのバンドなのかも、何も教えてくれない。









『ケチ玲於』









それでも私は連むのやめはしない。



居心地がいい人と一緒にいることが楽しいから。









あんまりにも仲がいいから私たちが付き合ってるって勘違いしてる人もいるけど、気にすることない。



私は私で、玲於は玲於。









先を歩く彼の背中をボーッと眺めてると、まだちょっと不機嫌そうな顔で振り向いた。



「置いてくぞ、A」









もしかしたら付き合うのかも知れないけど、それは今じゃない。









『はーい』



待ってくれてる彼の後を追う。



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