33 ページ33
*
どれくらい、そうしていたかわからない
やっと呼吸も落ち着いて、顔の熱も冷めてきた頃
湧の手で外されたボタンをまた、自分でかって
フラフラと立ち上がった
こんな時に会いたいって思ってしまうのが彼だなんて、私はやっぱり重症で
歩き慣れたその道を、ちょっとだけ早足で歩いた
黙って彼の家に来たのは初めてだった
でも、今日の私はいつも以上に心に余裕なんてなくて
ついてすぐ、押したインターフォンにはぁーい、と聞き慣れた緩いその声が響いてまた涙が出そうになった
「え、Aちゃん、？」
『そーたく、』
彼の顔に安心して、思わずその薄い胸に飛び込もうとした時だった、
「颯太？誰？...ってA？！」
『ユ、ウちゃん、...』
想像もしてなかった
まさか、ユウちゃんが来てるなんて
でも、当たり前だ。だって、颯太くんの彼女なんだもん。
何も変なことはない。変なのは私の方だ
「え、どうしたの？颯太に用？」
『あ、いや、...昨日！颯太くんが明日ユウちゃん来るって言ってたの思い出して...そしたら急に会いたくなっちゃった、』
玄関扉の前、そこに手をかける颯太くんの奥で
何それ！嬉しすぎる！って、目を輝かせるユウちゃんは私の方までやってくるとぎゅっと抱きついてきた
「私も会いたかった〜！」
『前会ったばっかだけどね(笑)
てか、邪魔してごめんね？』
「良いよそんなの！颯太とはいつでも会えるし！」
ね？と、ユウちゃんに聞かれ、まぁそうだねーなんて答える颯太くんに
相も変わらずチクッとする自分の心
「でもごめん、私もう帰らないとなんだ」
『そっか、もうちょっと早くこればよかったね』
「また今度遊ぼ！私行きたいカフェあるんだ〜」
嬉しそうに笑うユウちゃんは、Aも一緒に帰ろ！って
ユウちゃんを間にして3人で歩くその道は、歩き慣れてるはずなのに
何だか別の世界なような気がして、ソワソワする
「じゃあまた！連絡するね！」
「はぁーい」
『待ってるね』
満面の笑みで私たちに手を振り、改札に通るユウちゃんを
見えなくなるまで2人で見送った
「...Aちゃん、どうかしたの？」
『っ、...ごめんね、勝手なことして、』
「ううん、バレてなさそうだし大丈夫」
「......うち、来るよね？」
きっとユウちゃんはまだこの駅のホームにいる
分かってるけど、差し出された手に目頭が熱くなって
涙を堪えるように
その手を掴んだ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 829人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ucst0307(プロフ) - きいさん» 完結おめでとうございます！めちゃくちゃ面白かったです😭何度も読み返します！！ (2021年12月22日 0時) (
レス) id: f62ccc5a63 (このIDを非表示/違反報告)
きい(プロフ) - ucst0307さん» お返事大変遅くなってしまいすいません🙇♂️とても嬉しいお言葉ありがとうございます！最後まで楽しんでいただけていたら嬉しいです(^ ^) (2021年12月19日 16時) (レス) id: 5fec2377c4 (このIDを非表示/違反報告)
ucst0307(プロフ) - コメント失礼します。今一番楽しみにしている作品です！^ ^これからも楽しみに更新待っております♪ (2021年11月15日 0時) (レス) @page39 id: f62ccc5a63 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きい
| 作成日時：2021年9月25日 0時
