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家の前まで着いたのに、買い物も済ませたのに
いざインターフォンを押そうとすると手が震えた
『ただのお見舞い...人助け......』
緊張を解くために必死に自分に言い聞かせて、恐る恐る押したインターフォン
その音に反応はなくて、代わりに鳴ったスマホの通知音
〈かぎあいてる〉
〈おれのへやかいだんのぼってすぐ〉
全部ひらがなの読みにくいメッセージだけど、それすら何だか愛おしくて
頑張って押し殺そうとしてきた好きが溢れそうになった
『おじゃまします、』
もちろん、彼の家に行ったのは初めてだった
とりあえず荷物を持ったまま、玄関すぐの階段を上がり目の前の扉をノックすれば、はぁい、って掠れた声が返ってきて
ゆっくり扉を開ければ、ベッドでぐったりする彼が居た
「Aちゃん、」
『颯太くん大丈夫？』
「だいじょばない、あつい、さむい、むり、」
湧以外の男の子の部屋に入るのはもちろん初めてだったけど、そんなことに緊張している場合じゃないくらい彼は弱っていて、何とかしなきゃって、
多分無いだろうなって思って買ってきた冷えピタを差し出した
『これ、貼れそう？』
「むり、貼って、？」
ドキドキいってる心臓も一旦無視して、看病に専念しようって
汗で張り付いてしまっている前髪に触れれば、感じる熱に、あぁこれ、本当にしんどいやつだって
『...私でごめんね、』
ユウちゃんだったらよかったよね、なんて
自分を傷付けないための自虐を心で唱えたのに
「Aちゃんでよかった、」
『...な、んで、？』
「こんなよわってるとこ、ユウにみせたくないもん、」
あぁ、せっかく自分で張ってた予防線も台無しだ
彼の素直な言葉に勝手に傷付いて、泣きそう
『っ、...お粥、作ってくるね、』
「ん、ありがと」
辛いはずなのに、私に見せてくれた精一杯の笑顔が私には苦しくて、逃げるように台所に向かった
まだ、身近すぎた失恋の傷は癒えてなかったんだ
大学はユウちゃんが居ないし、湧とあじくんもいるから何とか気持ちを保てていたけど
初めての二人きりの空間と、久しぶりに彼の口から聞いたあの子の名前にメンタルはズタボロだった
やっぱりあじくんか湧に頼めばよかった
湧は料理できないけど、コンビニくらい行けただろうし、わざわざ私が行く必要なんてなかった
あんな言葉に浮かれて、バカみたい
身の程を知りなよ私
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ucst0307(プロフ) - きいさん» 完結おめでとうございます！めちゃくちゃ面白かったです😭何度も読み返します！！ (2021年12月22日 0時) (
レス) id: f62ccc5a63 (このIDを非表示/違反報告)
きい(プロフ) - ucst0307さん» お返事大変遅くなってしまいすいません🙇♂️とても嬉しいお言葉ありがとうございます！最後まで楽しんでいただけていたら嬉しいです(^ ^) (2021年12月19日 16時) (レス) id: 5fec2377c4 (このIDを非表示/違反報告)
ucst0307(プロフ) - コメント失礼します。今一番楽しみにしている作品です！^ ^これからも楽しみに更新待っております♪ (2021年11月15日 0時) (レス) @page39 id: f62ccc5a63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きい
| 作成日時：2021年9月25日 0時
