淡い残像に手を伸ばす【呪術廻戦】 (ページ12)

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『すみません、お忙しいのに付き合わせてしまって』

緑の上に立つ墓場。
それを見上げるAの表情が明るくないのは
七海でも分かる

七海「……時間はたっぷりありますから。
この後いくらでもゆっくりする時間はあります」

『…すみません』

Aはお辞儀だけすると
歩き慣れた道を1歩1歩進んでいく

＿＿＿＿＿萩原家之墓

ふたつ並んだ小さなお墓

そこには誰もいない。
何も無いその場所に
何の感情も抱けない彼らに対して
手を合わせる。

悲しいふりをすればいい？
泣かなきゃいけない？
＿＿＿＿＿やっと、いなくなってくれたのに

ひそひそと近所の人の声がする。

可哀想な子＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

遠くでAを見ている七海は眉を顰める
呪術師はやはりクソだ。
呪術師でなければ、見えなければ
彼女のこの痛みはとれたかもしれない。

いや、それもただの憶測か。

本当の苦しみは彼女にしか分かり得ない。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿何も知らないくせに。

ぐしゃり。

「さあ、行こうか＿＿＿＿＿」

夏の日の匂いがする。

絶え間なく過去に押し戻されて
ふと手を見つめる。

『どうして……』

夏油に着いて行った道の先が正しいとは思わない。

今でも答えは分からない。

分からないからAはまだ呪術師でいる。

でも、どうしても、やっぱり

捨てられたっていう実感だけが胸に残る＿＿＿

七海「おかえりなさい」
『……ありがとうございました。もう済んだので高専に』
七海「……私の用事に付き合ってもらえませんか？」
『七海さんの？』
七海「まだ高専をでてから2時間しか経っていませんから、少しくらいのんびりしたって許されるでしょう。
貴方のご要望は？」
『……でも、私何も知らない』
七海「今からいくらでも知れますよ。貴方なら。」
『……原宿』
七海「…」
『行ってみたいです。ダメですか？』
七海「構いません、行きますよ」
『ありがとうございます、七海さん』

らしくないことを言ってしまった
でも不思議とはしゃぐ彼女を見るのも悪くないものだ

＿＿＿「えー！また今度っていつ〜!?」

「そのうち連れていくよ。東京に用事があるさらね。」

「絶対だからね！夏油様！
……夏油様？」

「悪いね。考え事をしていたんだよ」

「またぁ？？」

「もし、あの子が居たら同じように原宿に行きたがるのかなってね。」

あの日、拾わなかった手を彼はじっと見つめていた