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Fside
宏光から、帰るという連絡が来てから随分時間が経った。
どこかに寄ってから来るのかと初めは考えていたが、さすがに遅い。しかも、メッセージを送っても返信がないし、そもそも既読がつかない。
どうしよう、事故にでも遭っていたら…と縁起でもないことが頭に浮かび、そんなことはきっとないと思いながらも電話をかけた。
「あ、出た。もしもし宏光？遅いけどどうしたの？」
電話に出てくれたことに安心し、そう言うも声が返ってこない。
「…宏光ー？聞こえてる？？」
「すけ…っ、はぁ…っはぁっ」
やっと微かに声が聞こえたと思えば、過呼吸にも近い息遣いが聞こえた。
「宏光…っ？！どうした？何があった？」
明らかにおかしいと、俺はそう尋ねながらもう立ち上がって上着を羽織り、外に出る準備をした。
「…おきゃくさん、に…っ、はぁっ、どうしよ…っ」
「大丈夫だから、落ち着いて？すぐ迎えに行くから。どこに居る？」
震えた声で伝えられた公園へ自転車を走らせた。そこはスーパーからも、俺の家からも割と離れている所で、自転車をダッシュで漕いでも10分近くかかってしまった。
でも、何があってこんな所に…。
「宏光！」
「…っ！！あ、た、いすけ、」
自転車を停めて公園内を捜すと、木の陰に小さく座っている宏光を見つけて声をかけると、宏光はびくりと肩を上げた。
「太輔、ごめ…あの、おれ…っ」
上手く言葉が出てこない様子の宏光へ手を伸ばす。そこへ伸ばしてくれた手は震えてきた。
「今無理に話さなくていいから。とりあえず帰ろう。
体すごい冷えてる」
俺はとりあえず震える宏光を抱きしめ、背中を撫でた。
少し落ち着いた様子の宏光を、後ろに乗せて自転車を走らせた。2人乗りは何度かしたことがあったけれど…
「宏光、平気？」
背中で頷かれる感覚がする。こんなに後ろから抱きつかれて、乗るのは初めてだった。ギュッとお腹に手を回されていて、ピッタリと体が密着していた。
信号待ちで様子が気になって少し振り向くと、背中に顔をピッタリつけた宏光は、フードも被って外も見ていなかった。
何かに怯えているようだった。そういえば電話で、お客さん…とか、言っていたような。
家に到着して、自転車から降りると手を繋いで家に入った。
毛布を渡して座らせ、すぐに温かい飲み物を作った。
「飲む？」
「…ごめん、太輔」
「何も謝ることないよ」
そっと肩に手を回すと、宏光は俺の方に頭をコテンと置いた。
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作者名：櫻弓 想
| 作成日時：2023年2月12日 23時
