いつまでも世話させてください FK ページ23
Fside
「…あーあ」
恋人が仕事に出た1時間後。
俺も時間なので出ようと玄関へ行くと、持って行けよと置いてあった傘がなぜか玄関にある。
そのときの会話を思い出す。
「きたやま、今日お昼頃から雨だって」
「ふーん」
「嫌だねー」
「うんー」
天気予報を観ながら話す俺の方に顔を向けもせず、朝ごはん(北山が起きるのをぐずっている間に俺が作ったもの)を食べながら返事する北山。絶対適当に返事してる。
「きたやま、傘持って行きなよ」
「ほーい」
北山が絶対に話を聞いていない自信があったから、用意している北山にまたそう声をかけた。
さらに、玄関に目立つように傘を置いておいた。
それなのにだ…。
呆れながら、俺は自分の傘を持ち仕事へ出た。
外へ出ると雨は本格的に降っていて、その雨の面倒さも相まって、北山が話を聞いてなかったことにイライラしだす。
傘持って行けって言ったでしょと冷たくメッセージを送っておいた。すぐに返信はなかったが、仕事終わりにスマホを開くとそうだっけ？と返信が来ていて、また少しイラついた。
今度からは出る前に声をかけなければ…と、そんなことを考えている俺は甘いのだろうか。
・
「……はぁ」
帰宅すると、ソファで北山が眠っていた。
ソファの下には靴下が乱雑に脱ぎ捨てられており、背もたれに上着が掛かっている。ここ、俺の家なんだけど。
静かに近寄ると、机に舞台の台本が置かれていた。
北山のことだから、少し休憩と閉じて寝転んだら寝てしまったのだろう。
子どもみたいな寝顔を見ると、イライラしていたことも、呆れたことも、スッと消えていくような感覚がして、これだから俺は甘いんだと今度は自分へ呆れた。
「…きたやま。起きて」
「んー…ぅー、」
「風邪引くよ」
「うーん…」
一度声をかけておき、少し北山の眠りを浅くしておく。
どうせ一度では起きないから、その間に北山の上着を元の位置へとしまい、靴下を洗濯籠へと突っ込む。
「きたやま！おきて！！」
そして2度目で本格的に起こす。１発で起こそうとするより、この方が早い。
「ぅ、ぁー…いつのまにかねてた…、」
「わかるけどさ、ソファで寝たら風邪引くでしょ。薄着だし。何も被ってないし」
「もうはるだし」
「まだ夜は肌寒いよ。寒がりのくせに」
ゆるゆると話す北山は、どうせまた俺の話なんか聞いちゃいない。
目を擦りながら、風呂入るわと言ってよたよた起き上がった。
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作者名：櫻弓 想
| 作成日時：2023年2月12日 23時
