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Fside
「ただいま」
「北山〜おかえり」
玄関まで迎えて抱きしめると、北山は緩く笑った。さすがに疲れていそうだ。
仕込みをしておいた夕飯を完成させる間にお風呂に入ってもらい、2人でご飯を囲んだ。ご飯は問題なくたくさん食べてくれて安心だ。
「さ、もう布団入ろう。休まなきゃ」
一緒に歯を磨いて、ベッドへ入った。
おやすみと頭を撫でると、布団の中で緩く遠慮がちに腕を組まれた。そして仰向けに寝ていた北山が、こちら側に横を向くと組んでいない方の腕で体を軽く抱きしめられる。
「…どうしたの」
その言葉に返事はなく、体を抱きしめる力を強められた。
肩にぐりぐりと顔を埋められる。
「なにかあった？」
「…ううん」
顔がゆっくり離れて、きゅるっとした目で見上げられる。
俺は頭に手を添えてもう少し上を向かせ、キスをした。
北山が唇を少し開けると舌を絡めてくる。頬に手を添えられて必死に追いかけられる。そんなことしなくてもどこにもいかないのに。
「ふじがや…」
「ん…？」
「したい、」
・
「ふ、じがや…っ」
「ん…？」
「ふじがや…、ふじがや、」
「どうしたの」
行為中、なぜか幾度となく名前を呼ばれながら求められた。首に回した腕をずっと離されることもなく、できる限りずっとキスをしたがった。
それなのに終わると、北山は背を向けて眠った。どうかしたのかと聞いたが、何もないと言われた。求められるって、普通なら嬉しいはずなのだが…北山の場合心配になる。
普段そんなことしないし、あの時もこうだったから。
それから毎日、家に行っていいかと連絡してみたが北山に断られた。
数日は言うことを聞いたが、勝手に行った方がいいのではないかという考えも浮かんだ。しかし、1週間後に仕事で会える機会があったから様子を見ることにした。
「…きたやま、」
「ん…？」
他のメンバーもいたが、楽屋に着いてすぐ、目を瞑っていた北山に声を掛けた。
「起こしてごめん」
「大丈夫。なに…？」
顔を見て思わず髪を撫でた。人前でそんなことをすることがないから、北山が目を丸める。
「…心配。今日は家行きたい」
「…大丈夫だよ、おれ。でもちょっと疲れてるからさ…来てくれても、ご飯ゆっくり食べたりもできないし」
「それでもいいから行く」
顔を見て今日は言うことを無視すると決めた。そこまで言うとさすがに北山も頷いてくれた。
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作者名：櫻弓 想
| 作成日時：2023年2月12日 23時
