「かわいい」番外編 FK ページ1
Kside
「やっば。もうこんな時間なんだ」
「…あ、だな。解散すっか」
バイト終わり、太輔とコンビニ前で駄弁っていたらもう0時過ぎ。
そこから少し歩いて、別れ道に到達。また明日会うのに、毎度とても寂しくなる。
「また明日」
「おん」
俯きながら、小さな声で小さく頷いた。
仕方なく1人になる帰路の方へ、体の方向を変えようとしたと同時、ぽんと頭に手を置かれて顔を上げる。
「帰ったら電話する」
「…こんなに喋ったのに?」
「だって、寂しそうな顔するから」
「…はっ?!」
寂しくねーよ!!と言おうとした口は、そっと太輔の唇によって塞がれた。
「電話するね」
「…うん」
「じゃ、また明日」
振られた手に、弱く触れながら手を振り返すと
冷たい手を最後にぎゅっと握られた。
その手越しに見えた顔は優しく微笑んでいて。
「はー…」
もっと帰りたくなくなった、なんて絶対言えない。
「うーさむい」
話してる時は寒くても平気だったのに、1人になると急に凍える。俺はマフラーに顔を埋めて、ポケットへと手を入れた。
付き合って2ヶ月。
頼られてるなーって思うこともあるし、どちらかと言うと俺が引っ張っている方だとは思うけれど。
いつもドキドキさせられてるのは俺の方。ベッドの上…の立場的に?そうなるのは仕方ないかもしれないが、そういう意味でも引っ張っていきたいなって、年上ながら思うのに。
俺は素直にモノ言えないし、太輔は平気でかっこいい言葉言っちゃうタイプだし…こうなるのは必然なのか。
付き合う前から、かわいいばかり言われている気がする。
立場はあれど俺も男だ。かっこいいと思われたい!というプライドくらいはある。
「…ってか、なんだよ。ベットの上の立場…とか」
夜道に1人で歩きながら何を考えてんだと思いながら、それもそれで幸せで、1人口角が緩みそうになる。
スキップしそうな足取りで家に着き、誰も居ない家の鍵を開けて入る。上着を脱いでとしていたところくらいで、着信音が鳴り響いた。
「もしもし?マジでかけてくんのかよ〜笑」
さっき散々喋っただろ、なんて
本当は嬉しいのにそんなこと言って。
太輔も太輔で、きっとそれが照れ隠しって分かっているから笑って流してくれる。
「てかさあ、今日レジ居たら、急におじさんに高校生?とか言われてさ。マッジ、なめんなよなー!」
散々喋っただろなんて言ったのに、電話越しまたベラベラと喋り続けた。
186人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:櫻弓 想 | 作成日時:2023年2月12日 23時