ラブストーリーは甘くない《紫》 (ページ2)

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深澤がまだ東京勤務だった頃、同期のよしみでよくふたりで飲みに行った。

気が合って、話していて楽しいし楽だった。

同期の中では一番仲が良かったかもしれない。

でもある日、同じ同期の女の子に呼び出され、聞かれた。

「わたし、深澤くんのことが好きだから告白したいと思ってる。一応聞いときたいんだけど、Aさん仲良いけど付き合ってる訳じゃないよね？」

咎めるようなその口調に、なぜか罪悪感を感じてしまったわたし。

「ただの友だちだよ」

自分でも言った瞬間から、深澤との色恋沙汰なんてあり得ない、と決めてしまった。

そんなのあっちゃいけない、と。

そこから飲みに行くのも断るようになり、疎遠になっていったところで彼の転勤が決まった。

そうか。

あの時から、

私の時は止まってしまったんだ。

噂によるとその時深澤は、告白を断ったらしい。

というか、深澤のことを好きだったのはその子だけじゃなかったし、

変な恨みを買ったりしないうちに彼と離れてよかったと、

その時は思った。

物理的な距離も離れて、仕事も忙しくなり、

そんなこんなで、

3年も過ぎていたんだな。

わたしの時が止まって3年。

久しぶりの再会は、

わたしの気持ちに、

驚くほどの、変化をもたらした。

彼とのラブストーリーは、

そんなに甘いもんじゃない。