青い春を駆ける【稲荷崎】 (ページ8)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:84,152 hit

第６話ページ8

Aが部活に入ってから、ちょうど一年が経つ。

あの双子に無理矢理部活に連れ込まれたと思っていたのに、いつの間にか立派な分析をして俺らをサポートしてくれる。

『５番は、ストレートを打つ時の視線は、必ず右に逸れます。角名くんは、視線のフェイントは気にする必要はないかと…！

あちらの５番はそういうことが苦手なタイプだと思うので』

角名「ん、わかった。つか、それどこで見つけたの？よくわかるね」

『試合何回も見直しましたっ』

尾白「すごい…！またあれ言われてるんちゃうか！」

あの異名で呼ばれる様になったのはいつだっけか。

________部活に入って間もない頃、家事が得意だとかでマネージャー業はスラスラとこなすし、仕事を頼まれて嫌な顔どころか辛そうな顔さえしない。

そんな彼女は当然部活でも重宝された。

侑「おいコラ！お前それ一人で持てるわけないやろ！」

『へ？全然余裕ですよ！こう見えても腕には自信が…！』

治「アホ！倒れる！」

『うひゃあ！？』

「「ああ～！！！」」

『す、すみません…』

侑「しゃあないなぁ」

治「ほら、早よ片付けんで」

あいつが絡むとあの双子が、気持ち悪いくらい優しい顔をする。

まあ俺も、あいつのことは気に入ってはいるんだけどね。

そんな中、Aの分析の才能が開花されていったのは、紛れもなく治のあの一言がきっかけだと思う。

練習試合を一年の俺らが控えに入って見ていた時、治が横のAに何気なく言った。

治「あの２番ってストレートばっかやな」

それに反応して俺も適当に相槌を打った中、Aだけは違った。

『それはあの２番さんが、セッターさんとあまり仲がよろしくないからだと思うです』

角名「仲が良くない？なんで？っていうか、それストレート打つことと関係ある？」

『あ、えと、先ほどお二人で口論しているのが見えまして、試合中のコミュニケーションの取り方もぶっきら棒と言うか…』

治「あー、言われてみれば打点一個分ズレてるもんな。
せやからストレート打つしかないんか。

要するにコンビミスってことやな」

いつも花を飛ばしてフワフワしている奴が、こんなハッキリしたことを言っていて、俺は正直びっくりした。
それは、隣で見ていた監督も同じだった。