第１８話 ページ20
古森「佐久早もさ、お前に会えて嬉しいんだよ。本当は。
けどあんなんだから、一緒にバレーとかしてやるしかないっつーか」
『もしや、今一緒に練習してくださっているのは…』
古森「うん。お前を元気付けようとしてるんだよ。
小さい頃、俺らのバレーを横で見てたみたいにしてさ。らしくないよな」
不器用な優しさにAは笑みが溢れる。
小さい頃、従兄弟の佐久早と古森の家に遊びに行ってよくバレーボールを見ていた。
その懐かしい思い出を彼らが覚えていることがなりより嬉しかった。
古森「ま、宮達に邪魔されちゃったけどさ。合宿中見てて、お前が元気そうに笑ってて良かった。
宮達の雰囲気も一年の頃から変わったし、Aのおかげかな」
『えっ？』
古森「まあそうだよな〜。佐久早がたまーーーーに笑うのもAのおかげだし」
『ええ？そ、そんな私は何も…！』
そこで今朝言われた監督からの言葉が頭をよぎる。
_________お前は自分を見縊ってんねんなあ
古森「ハハ、そう言うと思った。お前はもっと自分に自信持ちなよ。すげえやつなんだから」
『すげえ…やつ…？』
古森「うん、色んなやつを知らないところで救ってやってんだからさ」
清々しい笑顔で言った古森はすぐに試合のローテに呼ばれ立ち上がる。
その背中をぼうっと見つめる。交代で横に座った人物に気づきもせずに。
佐久早「そんでお前はいつまでそのアホヅラ晒してんだよ」
『お、臣くん！すみません！少しボーッとしてました！』
佐久早「辛い事は、消化できたか」
ポツリと小さく、でもハッキリと耳に届いたその言葉。
_______ お前を元気付けようとしてるんだよ。
古森の言葉を思い出し、また笑った。
『はいっ。臣くんや元也くん、皆さんのおかげで楽しいです！』
佐久早「そうなら良かった」
微かに微笑んだ佐久早の顔を見て、Aはそれが当たり前じゃないことに気づいた。
彼はもっと仏頂面で、無愛想で、でも少し優しい。
『ふふふっ』
佐久早「なんだよ。何笑ってんの。面白い事ねえけど」
『私は幸せものだなあと思ったです』
佐久早「…あっそ」
ぶっきら棒に返した彼の口元は少しだけ弧を描いていた。
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作者名：さくさくぱんだ | 作成日時：2020年6月1日 13時
