30. 小さなクローバー ページ30
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慧「 裕翔くん、見てみて 」
「 ん?なんですかー?」
彼の指差した方向を見れば、シロツメクサがたくさん咲いていた。
花は丸くて白い。茎は青々とした緑。
可愛らしく元気な色味にも関わらずどこか寂しい風情を感じるの、自分が日本人だからだろうか。
慧さんは小さな花を指先でつついて、柔らかく微笑う。
よほど気に入ったのか携帯を取り出し写真を撮っていた。
「 ふふ。慧さんみたい 」
慧「 ふぁ?おれ?」
「 白くて、細くて、可憐。ほら…慧さんだ 」
見上げて笑って見せれば、少しあざと過ぎたかな。
でもあなたの白い肌が赤くなったところを見れたから、良いとしよう。
慧「 もー、裕翔くんはそういうの息を吐くのと同じくらい言うから油断できないよ 」
少し頰を膨らまして、拗ねた様子を見せながら丸まる。
風に吹かれる髪を壊れ物のように触れれば、くすぐったそうに目を細めた。
俺だって、あなたの一挙手一投足に困らせられてるんですよ。
「 …じゃあ、これからも油断しないでくださいね。」
言いたい言葉は飲み込んで、意地悪く言って頬にキスを落とす。
「行きましょう」と手を引けば、あなたはまだ恥ずかしそうに目を見開いて口をパクパクさせてる。
こんなこと初めてじゃないはずなのに、ウブな反応をしてくれるから、嬉しくって仕方がない。
油断できないのは俺の方だ。
優しさと、穏やかさと、温かさ。
慧「 …その…手、繋いだままでもいい?」
喜びと、幸せ。
教えてくれたのは、慧さんなんだから。
責任取って俺の隣にいてよ。
「 当たり前でしょ…そんなの 」
慧「 えへへ。ありがとう 」
愛されたい慧さんと、愛したい俺。
二人が一緒にいるのは必然だったみたいだ。
そのあと、二人で四葉のクローバーを探していたら、泣き声が聞こえて手が止まる。
聞こえる場所まで行ってみれば、小さな子がうずくまっていた。
「 ボク、どうしたの?」
小さな子と同じ目線になれるようにしゃがんだのと同時に、その子が上を向いた。
「 …これ、探してたら…せんせと、はぐれたの 」
透き通るような黒い目をした、所謂、美少年が握っているのは四葉のクローバー。
胸がドクリ、動いた。
ひとりぼっちの、男の子。
「 せんせ、いない、のっ…」
背中が疼く。
もう、瘡蓋もないのに。
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伊野尾様love.@七星 - こんなに素敵なBLがあっていいものでしょうか…泣。なんなら私、見出し?というか目次で泣いてましたから←。神楽様の語彙力が凄まじいからです…!私もこんな小説がかけるようになりたいな…とつくづく思いました。ありがとうございました!! (2019年12月26日 3時) (レス) id: e41447f8a9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん» これからも楽しみにしています。更新頑張ってください! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - りぃさん» ご指摘有難うございます。先程の更新で変更させていただきました。これからも神楽共々「雨宿り〜」を宜しくお願い致します。 (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
神楽(プロフ) - ここみさん» ゆといのはほんとに素晴らしくて神楽も大好きなカップリングの1つなので是非楽しんでくださいね。そしてゆといのを書かれてる素敵作者様たっくさんおられるのでそちらにも是非! (2018年5月1日 0時) (レス) id: 5c1877f0f8 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ(プロフ) - 神楽さん、初めまして。神楽さんの色々な作品をいつも楽しませて頂いております。17ページで気になるところがあるのですが、「喫煙」ではなく、「禁煙」ではないでしょうか…?喫煙でしたら煙草を吸うという意味になってしまいます…!私の勘違いでしたらごめんなさい! (2018年4月30日 20時) (レス) id: 8fb5d7b3b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神楽 | 作成日時:2018年4月1日 15時