雨宿りするなら君の胸の中で。 ytin

Last. 雨上がりに虹を見つけた ページ49

yt side








小さな体を乗り出して、雨の降る外をベランダに足を引っ掛けながら、面白くなさそうに眺めてる。







「 …ねえ、ちゃんとゆうりのおはなしきいてた？」



「 ごめんごめん。侑李があんまり可愛いから見惚れちゃってた 」



「 もお、ゆうくんったら… 」



「 ふふ。ごめんね 」



「 しかたないから、ゆるしてあげる！」









「 ねえ、ゆうくん 」


「 んー？」


「 けーちゃんは…どこにいるの？」








君を引き取った日は、雨の日だった。

俺もあの人も、大嫌いな雨が、君の手を握った瞬間に、虹がかかったんだ。






「 けいさんは、ね……」






１１月３０日
俺と慧さんは若干五歳の子を家族に迎え入れた。

もちろん、事実婚の俺たちには子供ではなく弟にしかできなかったけれど。







「 慧さんは、どこにいるんだろうね…」





家族が増えた。それと同時に、減った。

そんな日に限って空は、雲ひとつない晴天だった。









泣けるほど、現実味がなく、
笑えるほど、非現実的でもなかった。







雨が降ると、思い出す。
俺を優しさで包んでくれた全て。

虹が架かると泣きたくなるんだ。
侑李と繋いだ手さえ離してしまいそうになる。







「 …けい、さん 」





花びらのようにあなたはどこか遠くへ。
「行ってきます」と言ったなら、責任を持って「ただいま」を言って欲しい。

光さんを探しに行けと言ったのは俺だ。
待つしかない。この子を一人にはできないから。








「 なあに？」








「 …え？」



侑李の、はしゃぐ声が聞こえる。
けど、風のそよぐ音だけノイズ音みたいに途切れながら耳へ入ってくるのもまた、事実で。








久しく見ていなかった、柔らかな微笑みを浮かべたあなたが白い手で侑李の頭を撫でる。


「 大きくなったね」とずっと、恋い焦がれていた声で。








「 けい、さ…っ」









俺たちはいつも、雨を怖がって、空を見あげようともしなかった。






侑李「 あー！見て！虹が出てるよ！」





だけど三人で手を繋ぎ、見上げた空。
どこまでも澄んだ青に映し出された虹に初めて知る、幸せが滲んでいた。



雨が降ってあなたと出会って、虹が架かって、侑李を見つけた。









「 おかえりなさい、慧さん…！」


「 えっと、えっとぉ…けーちゃん、おかえり！」








もう誰も、一人じゃない。









慧「 ただいま、裕翔、侑李 」






fin.

2018/06/24 更新→←48. 三人家族

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