彼らはいつもすれ違う。 (ページ9)

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京本大我side

昨日、北斗から五千円を借りた。

あの後、俺達の関係を知るJr.達に揉みくちゃにされた俺は隙を狙って一目散に逃げた。

「ったく、同じメンバーなんだから金の貸し借りくらいあるっての」

俺と北斗の場合は、今回が初めてだけど…。

そんなこんなで今日は北斗に金を返す、という結構なイベントが待ち構えている。

とは言え、考えていても仕方ない。

本日の仕事の集合時間一時間前を時計を指したところで、俺は家族に声をかけて家を出る。

電車に乗って、テンションを上げるために最近ハマっているアーティストの音楽を聴く俺は、やっぱこの人の詩のセンスは抜群だよなぁ…なんてちょっと上から目線で評論家を気取る。

約10分ほどその電車に揺られ、乗換の駅についた俺は目的の電車ホームに行き、後ろの車両を選んで乗り込む。

あと何駅で目的地に到着するのか確認するために顔を上げると、ちょうど同じタイミングで顔を上げた男と目が合う。

「あれ、北斗？」

最近色が落ちて明るくなった茶色の髪を揺らし、驚いたように俺を見る北斗。

「…京本」

思わず声をかけてしまった…。

別にいつも無言なのだから無理して話す必要はないが、やはり気にしてしまうのが日本人というもので。

「あ！そうだ昨日借りた金、今返す」

「ああ」

特に話題など思いつかない俺はごそごそと財布を出して、五千円を引っ張り出すと北斗に渡す。

とりあえず今日一日の中で必ずやらねばいけないことは終わったが、問題はこのあとだ。

チラ見した電光掲示板によると目的地まではあと3駅と微妙な時間。

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