煉獄杏寿郎の歪んだ愛 弐

愛73 ページ24

心臓が早く脈打って痛い。







思い出した。








前世の事を全て思い出した。









そうだ。





私は杏寿郎に殺されたんだ。








どうしてもっと早く思い出さなかった。









逃げないと。






逃げないとまた殺される。








時々感じた既視感の正体はこれだったんだ。







杏寿郎は覚えているのだろうか？




他の皆も覚えているのだろうか？







炭治郎が言った前世はこれの事だったんだ。



あの時は思い出していなかったからはぐらかされてしまったけれど。






でも宇髄さんが言った事ってどういう事？






月。







そういえば、あの日は満月だった気がする。





走りながら月が綺麗だと呑気に考えていた。






でもなんで宇髄さんが知っているのだろうか。




もしかして見たのだろうか。









いや、まずそんな事よりもこれを杏寿郎逃げない知られてはいけない。








杏「む…。もう起きていたのか？」







背後から抱き締められ、体が密着する。



頭上からう〜んと眠たげな声が聞こえる。








杏「？やけに心臓が早く脈打ってないか？」








杏寿郎が私の心臓に手をあてる。




その時、心臓を刺された事を思い出し、少し体が跳ねてしまう。




杏寿郎を見れば、驚いたような顔をしてこちらを見下ろしていた。





まずい、どうにかしてはぐらかさないと。








そう思ったが、杏寿郎は起き上がってどこかに行ってしまった。







ほっとしていいのか分からないが、この間にどうにか言い訳を考えないと。



とりあえず体を起こして体勢を変える。







杏「A。」









案外早く戻ってきたと思い、振り返ってひゅっと喉が鳴った。





杏寿郎が、日輪刀を持っていた。







首を掴まれ家の柱に叩きつけられる。




顎を掴み首がよく見えるようにされ、日輪刀がその首にあてられる。







杏「思い出したんだな。」








嬉しそうな声で言われ、さらに日輪刀が首にあたる。



冷たい感触を首で感じ、恐怖で涙がぼろぼろとこぼれる。








『ごめ、なさ……。』


杏「何故謝る？悪い事なんてしていないだろう？」








体がガタガタと震えて言うことを聞かない。









『や、やだ…やめて……死にたくない…………。』







震える手で顎を掴む腕を掴むが、力が入らず添えるだけになっている。

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