ささえあい。 (ページ47)

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『マサさ…っ！！』

真っ暗な部屋…ほとんど何も見えないそこに入ると、いきなり強く抱き締められた。勿論、頭はパニック。大の男に抱き締められちゃ身動きは取れなくて、私はただされるがままだった。だけどどうかお願いします、このドキドキだけは伝わらな…

『……ぇ』

伝わらないで、と願った時、ふと思った。
このドキドキは私の？それとも…マサさんの？
抱き締められたと同時にアルコール特有の香りとマサさんのいい匂いが香って、目の前は静かで真っ暗な部屋の中。そして、ドクドクとお互いの鼓動の音だけが響き渡りそうなくらい音を立てている。

…そっか、マサさんも、同じだ。

同じようにドキドキしてるんだ。
そうと分かれば少しだけ私の緊張が解れて、マサさんの鼓動に同調するように背中に腕を回した。時折抱き締められている腕に力が込められてちょっと苦しかったけど、気付けばいつの間にか震えは止まっていた。落ち着いた、のかな…

『…マサさん』

ゆっくり離れて声を掛けると、小さい声でごめんと言われた。別に悪い事じゃないと思う。でも多分、謝らずにはいられないんだ。とにかく私は部屋の電気をつけてソファを勧めた。マサさんを部屋に入れたのはこれで二度目。一度目はマサさんの誕生日…プレゼントを渡してドイツに行くのを断った日だ。

『どうしたの？』

こんなマサさんを見た事が無いから、私もどうしていいのか分からなくて難しい顔になる。マサさんと会って2年…短いかもしれないけど、少なくとも石川くん達との時間を考えると2年は長い。なのにマサさんの事、分からないなんて…

「…今日、泊まっていい？」

『え！？』

「無理ならいい」

『無理じゃないけど、ルームメイトは？大丈夫？』

「…大丈夫」

いや、本当は私の方が大丈夫じゃないです。マサさんが嫌いとかじゃなくて、ベッドはセミダブルとはいえ一つしか無い。一緒に寝るって事だよね！？仮にもマサさんにドキドキさせられっぱなしのこの状況で一緒に寝るとか…私の方が大丈夫じゃない！
でも心配だし…仕方が無い。

『お風呂入った？あ、ジャージ…ごめん、サイズ小さいから貸せないや…』

「入ってるから大丈夫。服も、このままで寝る」

…そっか。

『あ…じゃあ私、お風呂入って来るね。お水は冷蔵庫に入ってるから適当に飲んで。充電器も、適当に使っていいから！』

何とか丁寧に説明したつもりだけど、あまりにも“適当に”を使い過ぎだと後からになって気付いた。私、焦りすぎ。