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グラチャンが始まる前の夏のある日の事。
「久しぶりにご飯行かない？2人で」
そういえば召集されてから2人でご飯に行ってないな。昨年までは当たり前のように行っていたけど、忙しさにかまけてか、はたまた毎日一緒に居るからか…
『うん、行こう！』
久しぶりに2人でご飯です！
今日行くお店は、行き慣れた馴染みのお店ではなく初めて行く所。ほら、東京だし。向こうは大阪だったし。
「ここ凄く美味しかったんだよね」
『そうなんだ』
「一緒に来たくてさ」
『！』
「久しぶりに」
『…う、うん。久しぶりだもんね』
一緒に、というワードにドキッとした。今までのマサさんなら言わない事をサラッと言っちゃうんだもん。調子が狂うような、でもそれでいいようなよくないような…どうしたんだろう、私。
「何飲む？ソフトドリンク？」
本当はそれがいいんだろうけど、お酒を飲まなきゃ気も紛れない。それに今日はマサさんだけだし、寂しくならないはず！
『マサさんはどうするの？』
「俺に合わせなくていいのに」
『折角だし、マサさんが飲むなら飲みたいな。2人では久しぶりだし』
久しぶり。
そう言っておけば何とかなる気がした。
「じゃあ少しだけ。飲めなくなったら俺が飲むから」
『えっ、いいよ！私もそこまで飲まないから！』
「じゃあ飲ませる」
『ふふ、何それ』
今日の食事は、前回の皆との時とは全く別の感覚だった。あの時も勿論楽しかったけど、今回は楽しさよりも緊張の方が勝っている。話の内容は、皆の日常話。バレーから離れたありふれた話だ。石川くんがまたトマトを残したとか、ジャンケンで負けた人がアイスを奢ると言った清水さん本人が負けて奢ってくれたとか…本当、何気無い話。
「…今日は平気？」
アルコールはここまで、と2杯目にそれぞれいつもの飲み物を頼むと、マサさんがそう切り出した。
「寂しくなる？」
そう、つい先日マサさんの前でとうとう胸の内をさらけ出したのだ。一人で泣いてスッキリして、明日からまた頑張ろうとしてたらマサさんに見られてしまい、そのまま大号泣。バレちゃった。
『今日は平気』
「俺と飲んでるから？」
『うん。それに今聞かれても…』
「それもそっか」
『大丈夫。私、そこまで弱くないよ』
いっぱい頼ってって言われたけど、この寂しさは一人で乗り越えなきゃ駄目。変な気は遣わせたくない。多分、今日は大丈夫だ。だってマサさんと久しぶりに2人でご飯だもん。
マサさんと、だから…
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作者名：しおん | 作成日時：2019年10月26日 6時
