36 ページ38
「俺…Aちゃんが好き」
突然の告白。
後ろを向いたままとはいえ、どう返事していいのか分からなかった。
イタリアに来てと言われた上に告白なんて…完全に思考停止だ。
だけど、ここでふと思い出されたのは、マサさんの誕生日の時に言われた事。
「…祐希のとこ行くの」
マサさんはこうなる事を知っていたの？
訳が分からないよ、どうすればいいの私は！！
『……の、え…と』
たとえお人好しでも答えは見つからない。彼の望む答えも望まない答えも…
「…いいよ、知ってる。マサさんが好きなんでしょ」
『え…』
咄嗟に振り返ると、眉をへの字に曲げて優しい笑みを浮かべていた。
「昴さんが亡くなってから、ずっとマサさんが隣に居たんだよね」
『！！』
どう、して…それ…
「俺はただ、言ってすっきりしたかっただけ。寺島さん、心理カウンセラーでしょ」
ほんの少しの名前呼びは直ぐに名字に戻っていた。
私の頭の中は色んな事が一度に起こりすぎてパンクしていて、石川くんの苦しそうな表情が私にまで移ってきて涙が出てきそうだった。
『っ…何で、昴くんの、事…』
「今言ったら明日から練習出れなくなる」
『え…！』
「ごめん、俺の気持ちが落ち着いたらちゃんと話すから」
『うん…』
それ以上は何も言えなかった。多分、かえって逆効果だと思うから。
「…マサさんが好き？」
『……分からない。でも、昴くんは2人の特別。マサさんには凄く感謝してるし、ドイツに行くって改めて言われて…寂しいって思った。勿論、石川くんもだよ！』
改めて考えても、あの時は寂しさが強かったんだと思う。
「…」
『でもこれが好きとかじゃないのは分かってるの。それで一緒に来てとも言われて私…やっぱり行けないって』
「……そっか」
恋愛の意味での好きじゃないのは分かる。昴くんの時に感じたドキドキが無いから。だからこそ、石川くんにもマサさんにも、一緒に行けないという答えになった。
『…どうしてかな、石川くんにはちゃんと話せる』
「今の俺には傷に塩塗りたくられてる感じですけどね」
『ご、ごめんなさい！』
「はは、いいよ。言わなきゃしんどいだけだしね」
『…優しいね、石川くんは』
「寺島さん限定だったりするかもよ？」
『何それ』
「だって好きだもん」
『〜〜〜もう』
「ごめんごめん」
こんな事で私達3人の関係が拗れたりする事は無いと思う。マサさんとの関係も今までと変わらないけど、何故だか心が軽くなった気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 103人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しおん | 作成日時：2019年10月26日 6時
