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『…まんまと言われちゃった』

帰りの電車を待つ駅のホームで大きく息をついてマサさんに言った。私がマサさんと呼ぶようになったのはタメ口解禁の日からそう遠くはなかった。やっぱり「後輩にタメ口で喋ってる奴がいる」という例の後輩さん…石川祐希さんのお話を聞いて、私もマサさんと呼ぶようになったのだ。

「そうだね」

『マサさん、今日、試合観に行きたい』

「今日!?今日はどこもやってないぞ…」

『嘘!?』

「今はリーグ中だから練習公開もしてないのAちゃんも知ってるだろ」

そしてマサさんは私をそう呼ぶ。私だけ名前で呼ばれるのは嫌だという私のわがままで。
おばさんにあんな事を言われてバレーを観たいと、いても立ってもいられなくなったのだが、今日が平日だというのをまんまと忘れていた。
ちょっと残念だけど、今日は我慢して次の週末を待つしかないか…

「…あのさ、バレー、やらない?」

『…へ?』

それはあまりにも唐突だけど理由は簡単。バレーが観られないならやればいいだけ。
バレーは学校の授業でやった事がある程度の人間だが、昴くんとはオフの時に対人パスをした事がある。昴くん曰く、実力的には出来る方らしく、日本代表の彼氏から言われたもんだからたとえお世辞だったとしても思わず図に乗ってしまうのが私。
勝利の女神だと言われて「もしかして」と思った脳内ハッピーな残念な人間だから、それすらも鵜呑みにしていた。
そんな私だが、柳田さんに言われて答えに一瞬悩んだ。マサさんのサーブが昴くんをリスペクトしていたからだ。別にそんなサーブが飛んで来る訳じゃ無いけど、どうしても過ぎってしまうのは間違いない。でもそれは生涯付き纏うものだと思うし、それが嫌なら私がバレーから身を引けばいいだけの事で、結局は自分の問題だ。たとえプレーをリスペクトしていてもマサさんはマサさん、昴くんではない。この1、2秒が物凄く長く感じた。

「ごめん、嫌だった?」

沈黙を当然ながらマイナスに捉えたマサさんは少しだけ顔を覗きながら言ってきた。決して嫌とは思っていない、気持ちを整理していただけだ。咄嗟の事で声が出ずに顔だけ真顔で高速に横に振る。そして遅れて出る言葉。

『したい、っマサさんと!』

ほんの少しだけ詰まった「マサさんと」。
それは私が自覚を持って前に進もうとしている証拠。

「…じゃあ、帰ったらしよっか」

『うん』

ちょっと変わった私の旅立ちの瞬間、だったりして。

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作者名:しおん | 作成日時:2019年10月26日 6時

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