ささえあい。 (ページ29)

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世間は夏。移動中にも感じる夏の暑さは7月上旬にも関わらず猛暑が襲ってくる。

『あっつ…』

夏の暑さは苦手だ。建物とアスファルトによる反射熱が襲ってくる。もっと苦手なのは、ジリジリと熱を帯びる外気と室内のよく効いた冷房の温度差。これはいつになっても慣れなくて、寧ろ歳を重ねていくにつれてどんどんしんどくなっていく(※20代半ば)。
バスに揺られてやって来た本屋はやっぱり涼しいというより寒いの方がぴったりだった。

『さっむ…』

ほんの30分程で感想が変わるのか。フロア案内で目的のジャンルを見つけてエスカレーターを上る。私がここに来たのは石川くんとマサさんの為だった。
少しでも早く海外の生活に順応出来るように、簡単な料理本とドイツ語の分かりやすい参考書を買おうと思ってね。もしかしたら既に貰っているかもしれない…という不安を抱きつつも、良さそうなものを選んでプレゼント用にそれぞれをラッピングしてもらった。

『よし…！』

次に向かうのはスポーツショップ。マサさんの誕生日が近いので、そのプレゼント探しだ。

『…』

マサさんには色々と思うところはある。
まずはドイツに誘われた事…何を思ってそう言ったのかは分からない。本当に人の気持ちは100%どころか10%も分からないもので、それが異性ともなると本当に何を考えているのかさっぱり分からない。
普段のマサさんなら絶対に言わないのだけは分かっている…という事は…

何なの！？

さっぱり分からないよー！えぇ…一人で海外は寂しいとか？いやいや、マサさんに限ってそれは無い。移籍と共に大手芸能プロダクションと契約したからその担当者さんと最初の方は行くみたいだし、ホームシック的なものはマサさんに限って無い。

じゃあ何で！？

『分かんないよ…』

思わずぽつりと出た心の声は街を歩く人達の声にかき消された。