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*
「突撃ーっ！」
軍曹殿のあの声。
ざっと地面を蹴る音。
腹の底からの雄叫び。
耳元の空気を引き裂く銃弾の音。
閃光。
爆発音。
空気をつん裂くような人間の悲鳴。
敵か味方かなんてわからない。分類は、「人間」。
血の匂い。
土の匂い。
火薬の匂い。
全ては、暗闇の中に沈んでいった。
朝霞が仄かに明るさを帯びてきた頃、彼は目覚めた。辺りは、しんと静まり返っていて、体を動かして服の擦れる音を出すのすら躊躇うほどである。
昨晩も、こんな静けさが辺りを支配していた。
暫く自分の見ている景色に、その場に伏したままぼうっとしていた。
ふと、首を動かそうとして、何か少し硬いような気がしたので、うつ伏せの体勢のまま手をやるとざらざらしていて、一部頭を突き抜けるような痛みが走った。
どうやら昨日の戦闘でかすったようだ。
「……ri…ht」
体を起こそうする動作を止め、近くの死体の腹に潜った。日本語じゃない。現地人か、向こう、か。
ざかざかと軍靴と装備の音がしているから、多分敵の哨戒か何かだろう。足音と会話からして二人だ。
…切り抜けられるか。
「
「
つーっと嫌な汗が頬を伝う。心臓が早鐘を打った。
いざとなれば、と、山口は少し離れた所にある銃剣をちらりと見やった。
ざ、ざ、と軍靴の音が近くまで来てーー止まった。
「
「
「……
自分が狙いを定めていた銃剣が白い手に持ち上げられ、あ、と声を出しかけて飲み込んだ。
その直後、空気を切って銃剣が振り下ろされ、自分が被さっていた友軍死体の放り出された腕にズドリと刺さった。
目を見開き、硬直した。
絶対に動いてはならない。そう胸に刻み付けられた。
…暫くすると米兵は死体に唾を吐いて去っていった。
「…っ！」
堪らず、被さっていた死体を跳ね除けて後退りした。がちゃん、と死体が仰向けになって、腕に刺された銃剣が若干肉を抉りながら倒れた。
死体の下に潜り込んだとはいえ、自分も死体になりきるべく脚や腕を思い切り投げ出していた。
もし自分の腕や脚に刺さっていたら…？
山口は必死の形相でその場を離れた。
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作者名：嵩画@ブレリオ式単葉機 x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年9月9日 22時
