38．新世界初のプラチナチケット ページ42
布が完成してから、気球が完成するまではあっという間だった。
布以外は千空やおじいちゃんたちが作ってたし、布を縫い合わせるのはみんなでできて、すぐに終わってしまった。
「やっぱ杠はすごいねー」
まるでミシンのようなスピードで半分以上を杠が縫い、残りをみんなで縫った感じ。
私も頑張ってはみたけど、やっぱりあのスピードには追いつけない。
「伊達に手芸部やってないですからな」
完成した気球を眺めつつ、杠は笑いながら力こぶを作る真似をしてみせる。
私もクスクス笑う。
「これで空飛ぶの、すごいねー」
「ホント、ホント。千空だからこそだね」
完成し、ロープで引っ張り、広げられている気球。
知識はもちろんだけど、あの発想力はホントに尊敬しちゃう。
こんな状況で気球なんて発想、なかなかないよ。
「そういえば、誰が乗るの？」
「うーん、乗れるのは三人って言ってたから、一人は千空くんで、あと二人決めなきゃいけないね」
「はーい！みんな集まってー！」
タイミングを見計らったように、ゲンくんからお呼びの声がかかった。
「気球に乗るメンバーはあと二人。くじ引きで決めちゃうよー！」
話題もちょうど話していた内容だ。
ゲンくんはトランプを取り出し、慣れた手つきでカードを広げる。
トランプのジョーカーを引いた人が当たりらしい。
たぶん、龍水さんに行かせたいんだよね。
操縦とか諸々、龍水さんに頼りなんだと思う。
でも、油田の権利を求めるくらい強欲な龍水さんに頼むと、また何か求められちゃう。
だから、ゲンくんがくじ引きを始めたんだ。
絶対、あのトランプにはタネがあるよね…。
そんなことはお見通しなようで、龍水さんは笑みを浮かべている。
「フッ、そういうことか。俺の力が欲しいのなら素直に言え。ゲン、貴様の小細工に免じて、パイロット報酬は百万ドラゴにまけておいてやる」
そう言い、龍水さんはトランプを引き、高々とそのカードを掲げる。
が、それはジョーカーではなかった。
あれ？
龍水さんに引かせるんだと思ったのに？
私が首を傾げていると、ゲンくんがひっそり、自分でジョーカーを引いてみせた。
「あれぇ？まさか、びっくりー。俺にジョーカー当たっちゃうとか、困ったなぁ」
演技なのだろう、困り顔のゲンくん。
そこに千空が乗っかり、あれよあれよという間に、何故か龍水さんがお金を払い、気球に乗る権利を買う流れになっていった。
うわぁ、ゲンくん、敵に回さない方が良さそうだな…。
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作者名：菜野花 | 作成日時：2023年4月29日 21時
