小さな愛のお話【APH短編】

米:君色のキャンパス 11 ページ21

俺は彼女に才能があると言ったことがあるが、まさか、そのお返しというわけではないのだろうけど、『天才』なんて言われるなんて、思ってもみなかった。
　普段なら、他の人なら、ハハッまあ、俺は天才だからねっ、と言えるのに。
　「な、天才だなんて、そんな……」
　言葉では否定しているが、心がじんわりと熱くなっていく。
嬉しいという言葉だけで、今の俺が表現できるくらい、それくらいに嬉しい。でもそれはきっと、彼女だからだ。
　だけど、そんな想いは彼女の次の言葉によって、いとも簡単に崩れ去る。
　「まぁ、元が良かったからね！」
　ああそうだった。君はそういうやつだったね、忘れてたよ。言いかけて、やめた。
　それってつまり、モデルである俺が良かったということになるんじゃないか？と、なんとなく言い返したくなった。まあ、彼女の物言いからしてそうではないらしいから、それもあえて言わないことにした。
　「むぅ……でも、完成形になったのは俺のナイスアイディアのおかげなんだぞ！」
　駄々をこねる子供みたいに抗議すると、彼女は黙り込んでしまう。
　しかし、それで勝ったという気分にはなれなくて、そもそもなんの争いをしていたんだと、気が付けばすっかり戦意消失してしまっていた。
　体中の嫌なものが、全部出るように息を吐き出す。
すると一気に力が抜けて、その場に座り込んでしまう。
その様子を見て何を思ったのか、彼女は俺の右側にてくてくと歩いてきて、腕を後ろで組みながら俺の方を向いた。
　その格好に、その光景になぜか見覚えがあり、あっと気が付いて彼女に問う。
　「どうしたんだい？絵みたいな格好して……」
　彼女は笑いながら答える。
「んー？だって、楽しいじゃん」
　ああそうかい。そうだね、俺も楽しい。
　「そうだね。君といると楽しいよ」
　そう言えば、無邪気に笑う彼女はありがと、と口にする。
　爽やかな夏の風がスッと吹き抜け、俺の頬に集中していく熱を根こそぎ持っていってくれた。
　ねぇ、と声が飛んでくる。
　風が、また吹いてくれないかと願った。
　わたしはもっと楽しいよだなんて、聞いたら俺は、耳まで真っ赤になってしまうから。
　ナァ？！と、自分でも恥ずかしいくらいの間抜けな声に、台詞。
　「お、おっ俺の方が、もーっと楽しいからな！」

＿＿ほら、そうやってまた、人を小馬鹿にして笑う。
＿＿まあ、俺だって、君のそのアホ面を思いっきり笑ってるから、おあいこなんだけどさ。

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