米:君色のキャンパス 2 ページ12
今まで、こんなに真剣に鉛筆を握ることがあっただろうか。いや、絶対に無いと自信を持って言える。
「やばいやばい、すごいよコレめっちゃ上手いよ」
自分で言うのもアレだけど、とても良く描けてる。
まだ鉛筆で雰囲気っぽいのを描いただけの下書きの下書きだけど、その雰囲気というのがすごく良く伝わってくる。
本当にすごい。
達成感を感じていると、どこかから風鈴の涼しげな音が聞こえてきてスケッチブックとにらめっこしていた顔を上げる。
「ん？あれ、いなくなって……なかった」
私が書き写していた間もずっと立ったまま動かなかった人影は、ちょっと目を離した間に木の根元のところに座って、またもや何もしていない。
まだちゃんとした線書いてないのに、あの人を中心に描いてるのに動かれて、どうしたらいいのか分からない。
「あ、でもこれも…」
これはこれでいいかもしれない。
立っている儚げな絵も良いけど、座っている方がどこか夏らしさを感じる。夏休みの課題なんだし、そこそこくらいがちょうどいいか。
何で色をつけようか。やっぱり絵の具とかが無難だと思うけど、クレヨンもいいな。いやいっそ白黒でも……
なんて、たいして絵が好きなわけでもないけど、せっかく上手に描けたそれの未来を、頭の中に思い浮かべる。
色鉛筆とか珍しいんじゃない？とか思い悩んでいると、ふと目に入ったのはスケッチブックの中の人影。HBの鉛筆薄く描かれていても自己主張の激しいそれは、私の目には何故だか少し悲しげに映る。
「あー、そっかぁ……うわぁ、消したくないなぁ」
既にある人影を、消さなければいけない。私にとってそれは、このうえなく神経を駆使する拷問だ。
面倒くさいというよりは、消すこと自体がまず得意ではないのだ。どれだけ慎重に消そうとしたって、必ず消さなくてもいいところまで消してしまう。こんなに薄かったら、ちょっと擦るだけで全部なくなってしまうに違いない。
多分、今日一番大袈裟な溜め息を吐いて、左手をスケッチブックに添え、震える手で、今にも消えそうなほど薄いそれを、丁寧に丁寧に擦る。
徐々に消えていく人影に寂しさを感じる頃には、人影のあった場所だけがきれいさっぱり消されていて、代わりに別の場所に人影は座っていた。
「あっ、やった上手……！」
絶対に無理だと思っていたことが完璧にできたことに喜んでいると、手の甲に突然、ポツリとなにかが落ちてきた。
「あめ、かな？……うぇっ雨？！」
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そら色ぱんだ(プロフ) - イチゴフラペチーノさん» コメントありがとうございます。その言葉を待っていました！後でフェリちゃん視点の話を書く予定ですのでそちらで分かると思います。でもヒントを出すとしたら、フェリちゃんのお願いは絶対叶いますよ。 (2017年8月5日 11時) (
レス) id: a29f2cd473 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴフラペチーノ - フェリちゃんが主人公のお話でフェリちゃんとルートが何をお願いしたのか気になります！ (2017年8月5日 0時) (レス) id: e3c16ab556 (このIDを非表示/違反報告)
そら色ぱんだ(プロフ) - 小夜さん» ありがとうございます！その一言でやる気が溢れてきます！ (2017年5月14日 12時) (レス) id: 115534a937 (このIDを非表示/違反報告)
小夜 - とても面白かったです！頑張ってください (2017年5月12日 23時) (レス) id: 1ce20541ad (このIDを非表示/違反報告)
そら色ぱんだ(プロフ) - maoさん» それはよかったです！ありがとうございました！ (2017年4月30日 12時) (レス) id: 115534a937 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そら色ぱんだ | 作成日時：2017年2月19日 3時
