売れ残りなんて言わないで (ページ16)

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卵の殻かけご飯ページ16

ワインがグラスに注がれて、

ほんのりジンさんの顔も赤くなっている。

「あ、このワイン美味しい。」

口に含んだ低アルコール度数のワインはすごく美味しくて、

私も思わず笑みがこぼれた。

ジンさんはお酒が入っても良い人には変わりなく、

そしてちょっとお茶目なところもそのままだった。

JN「この前、卵かけご飯を食べようとしたんです」

「ええ、それで？」

JN「でも、気づいたらご飯の上に殻が乗っていて…」

すごい悲しかったんです、と言っているジンさん。

JN「思い出したらまた悲しくなってきました…」

こんなにお金持ちのジンさんでも庶民の食べ物食べるんだ、とか考えたけど、

ふと広いキッチンの中で

殻の乗ったご飯を前にしょんぼりしているジンさんを想像したら、

あまりにかわいく、そして面白すぎて思わず吹き出してしまった。

「ﾌﾞﾌｯ、そ、それはお気の毒でしたね…」

JN「ちなみにそのあともう一回同じことしました」

慌ててフォローする私の気も知らず、

畳み掛けるようにジンさんが言う。

いや…、一回やってるんだったら学習しようぜ…。

そう思うけれど、

3回目がなくてよかったです、とアヒャヒャ、と笑うジンさんを見て、

どうでも良くなって一緒に笑ってしまった。

…にしても、ジンさんって酔うと笑い方に特徴があるんだな。

そのあと、私達はこれが曲がりなりにも婚活だということを忘れ、

普通の親しい友人として敬語を外すまでの仲に発展し、

もちろん連絡先も交換した。

婚活にしては不本意な形で終わりそうだが、

ホテルの令息とも知り合いになれたし、十分すぎるぐらい楽しんだ。

ありがとう、チケットをくれたユンギ。

ありがとう、出席を推してくれた元旦那。

「まだ電車あるし大丈夫だよ？」

JN「いえいえ、ご心配なさらず、お嬢様。」

ふざけながらも、タクシーを呼んでくれるジェントルマンソクジン。

タクシーを待つ間、自然と次会う約束をした。

JN「あ、車来たよ」

「ほんとだ」

じゃあまたね、と挨拶を交わし、車に乗り込む。

「M駅の4丁目のマンションまでお願いします」

運転手「かしこまりました」

通り過ぎてゆくネオンを眺めながら、

私は今日あった出来事を思い出していた。

でもやっぱり、一番面白かったのは卵の殻かけご飯かな。

…なんちゃって。