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「オレ アノ場ニ飛ビ込ンダラ 癸七子 迷惑」
その言葉は確かに正論であった。
しかし鎹鴉は気を取り直したようにバサっと翼を広げて「伝言!伝言!」と声高らかに発した。
その言葉にハッと目を見開く。
義勇さんからだ!
続きを催促する――寸前、背中に鈍くて重い衝撃が加わった。
「ぐふっ!?」
体を翻して見れば、さっきなかった大きな石が落ちていた。
少し遠くで石を手にしてる鬼を睨む。
(コイツら……マジで楽しんでやがる……ッ)
ぶち、と痛みで可笑しくなったのだろう。変な思考回路が爆発して、気にせず走ればいいものを、
お返しだ!
とその石を蹴り返し、雪ごと砂を掴んで鬼に投げつけて視界を潰す。
その隙に【鏡花水月】で虚像を生み出し、実は戦闘中にこっそり【映し鏡】で視た
すぐにバレるだろうが、呼吸を整える貴重な時間だ。
(今のうちに止血を……つっ、今ので肉離れした……。靭帯切るよりマシか……)
「…………それ、で、ぎゆーさん……は……?」
と聞くと、肩から降りてトットットッと正面に立つ鎹鴉。
その仔は人間の私でも伝わるくらい真剣な表情で言葉を発した。
「“死ぬな。癸七子”」
――その、言葉に。
「……――――!!」
私は言葉にならない感情が溢れ出した。
(義勇さん……!!)
なんて、なんて……優しい言葉!
勝手に巻き込まれて怒りだしたいだろうに、
勝手に命賭けろとお願いしてきた奴なんか恨ましいだろうに!
そんな酷い私に“死ぬな”なんて……!
「は、はは……優しすぎて、嫌いになっちゃいそうですよ……義勇さん」
そうだ、ここでなんか死ぬもんか。
まだ私なんの自分の願いを叶えていないのに。
私、まだこの世界でいっぱいやりたいことあるんだから。
こんなところでくたばってる暇なんてない。
――だから、死なない。
癸七子は改めて決意する。
たったそれだけの心の変化が、少しだけ、力をくれた。
「ふぅぅぅ――」
まともな呼吸ができるようになる。
激痛で上手く吸えていないけど、それでも久しぶりの感覚に心地良さを抱いた。
微々たるものだが止血も出来た。
全部全部、義勇さんのお陰だ。
(――ありがとう義勇さん)
あなたは何度も私を救ってくれた恩人です。
あなたが居たからここまで来れた。
だから義勇さん。
(私はまだ、出来ます!)
「――――全集中・水の呼吸 拾ノ型――」
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雛月りな(プロフ) - 華さん» コメありがとうございます!自分でもこんなに手の込んだ展開が書けるとは思っていませんでした笑。(こっからネタバレかも→)まだ伏線回収がなっていないものがあるので楽しみにしていてくださいね!…皆さんが受け入れてくれる内容かは不安があるんですけど、アハハ (2019年8月17日 10時) (レス) id: e209b0612b (このIDを非表示/違反報告)
雛月りな(プロフ) - noiseーノイズさん» 主人公ちゃん可愛い雰囲気出てましたか!?いつも「口調悪い……もっと可愛くしたい……」と思いながら書いていたので、noise-ノイズさん(名前合ってますか?)のコメント嬉しさ半分と驚き半分で読ませて頂きました!バトル楽しんで頂けて良かったです!! (2019年8月17日 10時) (レス) id: e209b0612b (このIDを非表示/違反報告)
雛月りな(プロフ) - ひにゃたこさん» ありがとうございます!これからも神でいられるように頑張ります笑。嬉しいコメントありがとうございます!! (2019年8月17日 10時) (レス) id: e209b0612b (このIDを非表示/違反報告)
華 - 凄いしか出てきません!!とても面白い展開で、ワクワクしながら見させて頂きました!!大好きです!!これからも頑張って下さい!!応援してます!! (2019年8月17日 3時) (レス) id: 2aa6dd9a8d (このIDを非表示/違反報告)
noiseーノイズ(プロフ) - よ、読みやすいっ.....!主人公ちゃん口調とか可愛い雰囲気を感じるのに物語はすっごいバトルですね!いやぁー読んでて楽しいです!更新頑張ってください! (2019年8月17日 1時) (レス) id: c4f6a2aaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛月りな | 作成日時:2019年8月5日 18時