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「ひっ……ぅげぇっ……」
足がすくんでその場から動けなくなった。恐怖と陰惨な光景に
16年間の前世の記憶があるとはいえ、またまだ未熟な子供。子供にこの光景は刺激が強すぎた。
逃げなきゃ、と行動したのはどのくらいの時間を要しただろう。体の震えは収まることなくむしろ悪化してして、嫌な汗が全身をジトリと浮かんでいた。脈がドクドク打つ。冬なのにアツくて、でもツメたくてモノスゴクキモチワルイ――
役に立たない足腰。体を這いずらせて逃げる。
――が。
「ん? おおっここにも人間だァ!」
「……っ!? ひ、ぁ、ああ……」
ザク、雪を踏む音が目の前で鳴った。そこにはもう1人の鬼がいた。
私を見つけた鬼は舌舐めずりしてダラダラと涎を垂らしている。
喰われる
「ひっ……!」
逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃお願い動いて私の体……!!
どんなに叫んでも体は答えてくれない。
首根っこを捕まえられ、もう1人の鬼の所へと引きずられていく。
せめて、と泣き叫んだら鬼に殴られた。
鬼の力は強い。非力な人間である私にはどうしようもなかった。
「おっ! 美味そうなガキじゃねえか!」
「だろ? ヒヒッ」
べちゃっ。真っ赤に染った雪に放り投げられ、食い散らかされた人間が目に入って上擦った声を上げ、赤い雪の上で吐いた。
嫌だ。私、また死んじゃうの? また生き地獄を味わなきゃいけないの?
いやだ。死にたくない。もう、あんな苦痛に堪えられない。死にたくない死にたくない死にたくない――!!
動け動け動け!! 動かなきゃ死んじゃうんだから! 動け!! 私の体!!
「ぅ、ああ、あああああああああああああ!!!!」
――その時、なにかが私の体を攫った。
え――?
瞬きの間に鬼の姿が遠くにあった。
遅れてビュッと風の切れる音と共に鬼の頸が宙を舞う。
やがて鬼の頸は雪の上に転がって、切れた断面からサラサラ粉になって空気に溶けて消えた。
…………一体、何が起こったの……?
一瞬の出来事に混乱していると、近くで男の声が聞こえた。
「大丈夫か」
「……え、は、だいじょ…………んん?」
静かな声音に、少し落ち着く。
いつの間にか私は男に抱えられていたようだ。体が攫われた感覚はこれだったかと気づく。
この人が、助けてくれた……?
まだすこし混乱が残る中「大丈夫です」と答えようとして……ふと彼の着物が目に入って再び混乱の嵐が来た。
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雛月りな(プロフ) - 華さん» コメありがとうございます!自分でもこんなに手の込んだ展開が書けるとは思っていませんでした笑。(こっからネタバレかも→)まだ伏線回収がなっていないものがあるので楽しみにしていてくださいね!…皆さんが受け入れてくれる内容かは不安があるんですけど、アハハ (2019年8月17日 10時) (レス) id: e209b0612b (このIDを非表示/違反報告)
雛月りな(プロフ) - noiseーノイズさん» 主人公ちゃん可愛い雰囲気出てましたか!?いつも「口調悪い……もっと可愛くしたい……」と思いながら書いていたので、noise-ノイズさん(名前合ってますか?)のコメント嬉しさ半分と驚き半分で読ませて頂きました!バトル楽しんで頂けて良かったです!! (2019年8月17日 10時) (レス) id: e209b0612b (このIDを非表示/違反報告)
雛月りな(プロフ) - ひにゃたこさん» ありがとうございます!これからも神でいられるように頑張ります笑。嬉しいコメントありがとうございます!! (2019年8月17日 10時) (レス) id: e209b0612b (このIDを非表示/違反報告)
華 - 凄いしか出てきません!!とても面白い展開で、ワクワクしながら見させて頂きました!!大好きです!!これからも頑張って下さい!!応援してます!! (2019年8月17日 3時) (レス) id: 2aa6dd9a8d (このIDを非表示/違反報告)
noiseーノイズ(プロフ) - よ、読みやすいっ.....!主人公ちゃん口調とか可愛い雰囲気を感じるのに物語はすっごいバトルですね!いやぁー読んでて楽しいです!更新頑張ってください! (2019年8月17日 1時) (レス) id: c4f6a2aaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛月りな | 作成日時:2019年8月5日 18時