戦前準備：A ページ4
…真名については後々考えるとして。
まずは腹拵え。
腹が減っては戦ができぬとよく言うがほんとにその通り。
普通の魔術師にはそんな関係無いだろうけど、鹿乃の魔術は繊細。
手先を器用にしなくてはならないのだ。
料理は修練のひとつである。なんちゃって。
手先を器用にするとは言ったが料理自体はあまり好きではない。
魔術と料理は良く似ている。
より良いものを見つけるために面倒な過程を踏まなければならないあたりが特に。
適当にお椀を取り出し卵を割る。
私は一般人の思考を持つ魔術師と良く言われる。根源なんて目指してない。
塩胡椒を適当に振りかけ、菜箸を取り出して卵を溶く。
聖杯戦争に参加したのだって命惜しさからだし。
温めておいたフライパンにマーガリンを溶かして敷く。
そういえば、協会に顔を出さなくては。参加表明はしないといけない。
卵を流し入れる。ついでに皿も出しておく。
魔力は余裕があるし、出向くのも悪くない。
適当にかき混ぜる。数秒で固まるので楽だ。
心を読むのが得意な人が神父だから、サーヴァントに話を聞くのは後にしよう。
茶碗を出して、召喚する前にセットしていた炊飯器からご飯を出す。
えっと、たしか…
皿に盛り付け。ケチャップも取ってくる。
スクランブルエッグの完成だ。
「それはなんだ？」
セイバーが物珍しそうに見ている。
何処ぞの記録にサーヴァントの中にはパンケーキを知っている人物もいるというが…
そういうサーヴァントが生前でその料理を知っているとすれば、聖杯には知識を与えられていないということか？
とすると近代の英霊ではないようだ。もうちょっと前か。
とりあえず話さなければ。
「これはスクランブルエッグという料理です
卵に塩胡椒を振って焼いただけなんですけどね」
「卵…鳥のか。美味いのか？」
「ええ。私の好きな味付けなので皆が美味しいと言うとは思いませんが」
「少し食べてみてもいいか？
現代の料理は少し気になっていてな」
「少しでしたら構いませんよ。私の魔術使用に阻害が出ない程度でお願いします」
「汝は腹が減っていなければ魔術が使用出来ないのか？」
「動くにも魔術を行使するにも、エネルギーを浪費してしまうので…」
「理解した。それでは1口頂くとしよう」
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作者名：石蕗 | 作成日時：2018年1月16日 14時
