縁側の幸せ2 (ページ26)

今日:5 hit、昨日:10 hit、合計:12,147 hit

75 ページ26

.

次の日朝ご飯を食べた後食器を返却してから病室に戻ると不動産屋から着信があった

Aが入院した事を倫也から聞いていたらしく、体調が良くなったのであれば病院まで契約書を持ってきてくれるとの事で
退院の日取りが決まったは良いものの、住む所がまだ決まっていないのが気がかりだったAは不動産屋の申し出に感謝した

『良かった！もうホテル取らなくて済む』

電話を切った後もニヤニヤしながら喜びを噛み締めているとコンコンとノックが2回聞こえた後ガラリと扉が開いた

「こんにちは、どしたの？すごい機嫌良いね」

そう言いながら病室内に入ってくる倫也にAは挨拶もそこそこで済ませてさっきの電話の内容を話した

『中村さんのおかげです、本当ありがとうございます！』

「俺は伝えただけだよ、でも良かったね。」

『はい、今から楽しみでワクワクします』

「そっか、元気そうでなりより」

またクスクスと笑いながら倫也はAが出会った頃の様に楽しそうに笑っている事に安心した

「そうだ、これ約束してたもの」

『え？…あぁ！ありがとうございます！』

大きめの紙袋を受け取ったAは約束していたものが何だか分からないといった様子で包みを開き、この前の会話を思い出してからすぐにお礼を伝えた

中には使い勝手の良さそうな白いバケットハットが入っていて、Aはすぐに被ってみせた

「うん、似合ってる。黒と迷ったんだけどAは白かなって」

『ありがとうございます、私も最終候補までは絞れてるので！退院までにはプレゼントしますね』

「ありがとう。でも退院まで俺来れないかも」

『あ…お忙しいですか？』

「ふふ、お忙しいですね〜実は今日もそろそろ出なくちゃいけないんだよね。地方にも行かなきゃだから次会えるのは退院してからかも」

『あー…はい』

退院してからという事は2週間弱会えないという事で分かりやすく落胆の色を見せるAの表情に倫也は満足したように微笑んだ

「寂しい？」

『…はい？』

「顔に書いてる」

『書いてませんよ、気のせいです』

「Aは分かりやすいのに、素直じゃないんだから」

『…ちょっとだけ寂しいです』

「ちょっとっていう顔じゃなかったと思うけどなぁ」

『もう！良いですから、体に気をつけて無理しない程度に頑張って来て下さいね』

「ありがと、じゃあまたね」

そう言うと倫也は席を立ち、行ってきますと病室から出ていった