8話 ページ10
ウ)「さぁ、やってごらんなさい」
朝、おばーちゃんに着方を習った。
ほんのりとお化粧もしてもらい、鈴をもつ。
おばーちゃんの横に…鶴丸。
ポカンとした顔が可笑しくて、吹きそうになった。
おばーちゃんが和琴を取り出し、弾き始めた。
…本当、何でもできるなぁ。
その音に合わせて、舞い始める。
シャンシャン、と鈴が鳴るたびに、周りが澄んでくのがわかる。
丁寧に。
段々と慣れ始め、気づけば終盤に差し掛かった。
後少し。
だけどこのまま舞っていたい。
ウ)「…立派になったねぇ」
その一言で、舞い終わったのだとわかった。
おばーちゃんの目には涙が滲んでいた。
その顔は”御堂ウメ”じゃなくて、”孫を見つめるおばーちゃん”の顔をしていた。
あ)「…出来てた？」
ウ)「あぁ。…しっかり焼き付けたさ」
鶴)「よかったじゃないか。驚いた」
あ)「なら…よかった」
2人に褒められたのが、すごくこそばゆく、恥ずかしながらも嬉しかった。
その顔が、おばーちゃんを見た最後だった。
「この度は御愁傷様です」
声が、遠い。
言葉が、よく聞き取れない。
どうして私はここに立っているんだろう。
微かに匂う、線香の匂い。
啜り泣く声に、お経を唱える声。
目の前には…箱に詰められ、目を瞑るおばあちゃん。
なんで、布なんて被せてるんだろう。
…あれ、私、神楽を舞ってたはずなのに。
おばあちゃんが泣きながら笑ってくれて、鶴丸だって喜んでくれて。
それから、それから…
鶴)「A」
あ)「…つ、る…？」
振り向けば、真っ白いヒト。
鶴丸が立っていた。
あぁ、私達真逆の服を着ているね。
そういえば、悲しそうに笑った。
鶴丸、おばーちゃんが寝てるの。
中々起きないんだ。
鶴丸は静かに首を振るだけ。
何で、色んな人が”御愁傷様です”なんて言うのかな。
意味わかんないよね。
鶴)「…A、ウメは…」
あ)「やめてっ！聞きたくない…」
鶴)「現実から目を背けるな！ウメは…ウメはっ……亡くなった」
キーンと、耳鳴りがした。
今までモヤがかかってたものが全てはっきりと見えた。
目の前で横たわるのは、私のおばーちゃん。
遺影ですら、笑っていない、綺麗なおばーちゃん。
周りの泣く人は、参拝者や、おばーちゃんの知り合い。
全部全部…現実なんだ。
あ)「ぁ…あ、あぁ……っおばーちゃん…っ」
認識した途端、涙が溢れてきた。
それから、おばーちゃんの噂が聞こえてくる
あ)「お…ばーちゃ…は…っ末期ガンっ…」
知らなかった
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作者名：なーこ | 作成日時：2017年3月6日 17時
