26話 ページ28
呼ばれた刀剣男士が前に出てきた。
彼が、山姥切国広。
鶴 乱)「「山姥切/山姥切さん!」」
二人の呼びかけにビクッと肩を震わす。
それから、二人と、杏奈さんを交互に見た。
わけがわからないと言うふうに。
杏)「…国広だけ残ってくれるかな。後は…ごめんなさいね、席を外してくれる?」
加)「でも、主…」
杏)「大丈夫大丈夫。ただ、話すだけ」
杏奈さんが柔らかく微笑めば、清光さんは黙る。
それからキッとこっちを睨んだ。
まるで”傷つけたら許さない”とでも言いたげに。
あぁ、愛されてるんだなぁ、杏奈さん。
ここは、暖かい。
春の陽だまりの中のように、心地よい。
ようやく二人と三振が揃った。
杏)「国広、前の二人に見覚えがある?」
山)「……あんたがそうやって話すって事は、前の主と関係してるんだな」
鶴)「…久しいな、山姥切」
乱)「…元気そうだね」
ぎこちない。
それはもう、触れたら壊れそうな程。
脆く柔く繊細はガラスみたいに。
腫れ物を触るかのように…探る。
山)「…なんの用だ?」
鶴)「あ、あぁ…そうだな…」
鶴丸は言いにくそうに口ごもる。
今日ばかりは、乱もフォローできないでいた。
あ)「…貴方を引き取りたい」
杏)「なっ!?」
ガタン、と机に手を置き立ち上がった。
その拍子に、お茶が溢れた。
杏)「…どんな気持ちで…っまた!あんたがこの子を…っ」
多分、勘違いをしてる。
私が前任だと思ってる。
山)「…やめろ」
杏)「国広…でも…」
山)「…おれはこの女を知らない。こいつは、前任でもなんでもない。…鶴丸国永と乱藤四郎のみ、元主の時の仲間、だ」
杏)「…それは失礼しました」
やっぱり。
私を前任だと思ってたんだ。
山)「…どうして引き取りたいんだ?」
あ)「鶴丸が、会いたいと言ったから。もう一度、やり直したいと願ったから」
ただ、それだけ。
どうせ仲間が増えるのなら、元仲間と幸せになりたいだろう。
あ)「…私は審神者になって2日目です。鶴丸と乱しかいません。…貴方を三振目として、迎えたいと思ってます」
ここまで言ったらもう。
趣旨は伝わっただろう。
後は、山姥切国広が決めるだけ。
彼の表情はフードでよく見えない。
が、考え込んでいるようだ。
隣の二振からは、息をころした音が洩れる。
山)「……すまないが、断らせてもらおう」
うん。
なんとなく、分かってた。
杏)「国広…」
山)「俺は今の主に救われた身だ。この身を最後まで、主に仕えたい」
杏奈さんはポロポロと泣いた。
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作者名:なーこ | 作成日時:2017年3月6日 17時