1話 ページ3
嘘、でしょう。
初めて彼を見た時、私は言葉が出なかった。
彼、鶴丸国永。
この家に住み着いてる、刀の付喪神。
なぜこの家にいるのかは、謎。
それよりも…
あ)「…なんで、見えるの？」
そう。
私にはそんな特殊能力なんて、なかった。
おばあちゃんはあるらしく、小さい頃”ナニカ”と話てるのを見た事がある。
母は…どうだろう。
そんな話、聞いた事ない。
そもそも、最近、母とまともに話をしてない。
鶴)「こりゃ驚いた。ウメ！A、俺が見えてるぞ！」
ウ)「…そうみたいだね」
あ)「え？え！おばーちゃん、コレ、見えるの！？」
親しげに話す彼とおばーちゃんを交互に見たのを覚えてる。
ひどいなぁ、と笑う彼を無視し、おばーちゃんは”鶴丸国永”について教えてくれた。
それが、まだ。
私が高校生だった頃の話。
つまり、一ヶ月前の話だ。
今はもう卒業し、代々続く巫女を継ぐべく、おばーちゃんの元、修行中だ。
あ)「ちょ、鶴丸ー、布団干しといてー」
鶴)「おいおいおい、君は俺を何だと思ってるんだ…」
あ)「居候。だから、ほら。働きなさいよ」
鶴)「いたっ。…ウメーーー！助けてくれ！」
ウ)「国永、手伝っておやり」
鶴)「ウメまでもが…」
あ)「ナイス、おばーちゃん！…ほら、鶴丸、行くよ！」
泣き言を呟く鶴丸を引っ張り、布団を干しにいく。
その姿をみてると、鶴丸が”神様”って事を忘れそうになる。
あ)「ちょっと、そっち引っ張ってよー！」
鶴)「君こそ、それはシワがーー」
あ)「あー、はいはい」
鶴)「なっ！」
ぶつくさ文句を言いながらも、やってくれる。
…実は、鶴丸は、おばーちゃんの式神なんじゃないかと思ってる。
刀の付喪神、何て言われても、ピンとこない。
刀だって、見た事ないし。
それに、おばーちゃんによく懐いてる。
口を開けば、ウメウメって。
あ)「全く、鶴丸は…うわっ」
鶴)「危ない！…っと。はぁ…君はそそっかしいなぁ…」
あ)「びっくりしたぁ…ん、ありがと」
けど。
鶴丸は、式神にしては実体がしっかりしてる。
…気がするんだよなぁ。
ま、式神についてはよくわからないけど。
あ)「そーだ、鶴丸。昔からいたの？」
鶴)「俺か？あぁ、Aがこーんな小さい頃から知ってるぞ？」
あ)「…はぁ？私、そんな小さくないし」
鶴)「いつもウメの後をついて回ってたろう！？」
あ)「覚えてない」
鶴)「君って奴は…全く…」
この奇妙な生活が、妙に心地よくて。
ずっと、続けばいいと思ってた。
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作者名：なーこ | 作成日時：2017年3月6日 17時
