第91話 ページ44
『三日月さん、ありがとうございます』
「自分の身は自分で護らねばならんぞ」
『...気をつけます』
「まだ、あの男との交際をしていたのだな」
『はい』
「お主にその気がないのならば、断れば良い」
『政府が絡んでいる以上、そう簡単にはいきません』
「だが...」
『どうしました？』
「首筋に何やら赤い跡がついているな」
『...っ！』
「間に合っていたはずなのだが...」
『こ、これは、その...』
「まさかとは思うが...」
『....』
「三日月宗近か？」
『えっと...』
「恋仲になったのか？」
『む、虫除けだって言ってたので意味はなくて＿＿』
「はっはっは。意味はないか。...それはなかろう」
『え？』
「このいくつもの赤い跡は、自分のモノだという印だ」
首筋に付いているキスマークを指でなぞっていく
『んっ...』
「その愛らしい声も、あやつも聞いたのだな」
『三日月さん...』
「お主は俺のおなごだ。昔も、今も...んっ」
『んんっ！？』
いきなり三日月さんにキスをされた
昔してくれた愛のある優しいキスじゃなく、荒々しいキス
怒りと嫉妬で愛を感じられない
こんなの三日月さんらしくない...
「んっ...はぁ...」
『...三日月さん』
「三日月宗近には渡すつもりはない。お主があやつを好きでもだ。んっ...」
『あっ...』
三日月さんが付けた跡を上書きするかのように付けていくキスマーク
『三日月さん、痛いっ...』
噛みつくように付けていく
怖い。三日月さんじゃないみたい
「自分が付けた跡を付けられる。そして、お主は受け入れた。あやつはどんな顔をするだろう」
『...っ！』
"[A]"
三日月さん...
『やめて！』
ドンッ！
三日月さんの笑顔が浮かんだ瞬間、私は三日月さんを突き放していた
「...っ！」
『あっ...』
「A...」
『ご、ごめんなさい。私...』
「はっはっは。これが、お主の答えなのだな」
『えっ...』
「お主は俺を拒んだ。それは、もう俺への気持ちが何もないからだ」
『そ、そうじゃなくて！』
「もう良い。すまなかったな」
『ちょっと待って！三日月さん！』
三日月さんは私の言葉に振り向くことはなかった
「A」
『加州...』
「今日は帰ろう」
『え？デートは？』
「そんな顔でデートしたくないから...」
『そんな顔って、どんな顔？』
「泣いてるじゃん」
『あれ？本当だ。どうして？』
これで良かった
これで正しいはずなのに、どうして涙が出るの？
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作者名：ゆきんこ | 作成日時：2020年9月22日 20時
