第8話 ページ9
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家を弁償。
そんな言葉並び、聞いた事があるだろうか。
そう思ったと同時に、男_____被疑者改め中原中也サンは一息吐いて私をちらりと見た。
「えー、あー…ごほん。じゃあ行くぞ、A」
何ともぎこちない喋り。
『何処にですか?』
それに答えると、歩き出す中原サンは「ホテルか俺ン
『はあ』
何とも答えづらい二択。
「今夜は一先ず其処に泊まれ。話はそれからだ」
…どうやら、弁償すると云うのは嘘ではないらしい。
彼は私が付いて来ている事を確認して、また前を向いた。以外にも紳士な一面があるっぽい。
じゃあ私は素直にお言葉に甘えるべきか。
『じゃあ横浜で一番高いホテルのスイートルームで』
「…手前……、」
『夢のマイホー』
「今から手配する」
マフィアの幹部って意外とチョロ……じゃなくて、そんな彼は車を持っているらしい。
携帯電話を忙しなくタップした後
尻ポケットから鍵を出すと、彼はそれを指で回しながらぶっきらぼうに吐いた。
「明日は仕事か?」
『あ、そう云えば中原サンって、ナチュラルに女性を家へ誘うんですね』
「交通手段は?」
『ええ、無視ですか?』
「……手前、善い度胸してんンな」
『それ程でも。他人の家を吹き飛ばす中原サンに比べれば埃の様なものですし』
「もうやめてくれ…、」
ただ事実を並べただけですけどね。
どんよりとする背中は更に小さく見え、中原サンは苦しそうに「胃薬」と携帯に語りかけていた。
そして人工知能は「すみません、よくわかりません。」と流暢に受け流している。
少し歩いて着いたのは、路駐してある黒い車だった。
暗闇でも判るなかなかの高級感。
値段を聞いてしまえばきっと、私の目玉は飛び出てしまうのだろう。
『えっと、之に乗れと?』
「他にどうやって行くんだよ」
バタンッと運転席の閉まる音が私を急かす。
そのうちエンジンがついて、ライトが照らされた。
日常を過ごしていれば体験し得ない展開に、徐々に理解が追いついてくる。ああ、本当に弁償してくれるんだなあ。って。
『…はあ、お酒飲みたい』
先程まで他人だった人の隣に座るのは気が引けるが、しょうがなく助手席に乗り込んだ。
家が吹き飛んでいなければ今頃、部屋の絨毯の上でお摘みとお酒を貪りながら売れない芸人の芸で腹を抱えて笑っている頃だ。
しかしその家はもう、
消しカスの様に手で払われ消し飛んでしまったのだが。
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レインボー文豪娘 - このぶっ飛んだ始まりと、「また家を吹っ飛ばしに行く」というセリフが素晴らしすぎました。最高でした。 (4月14日 22時) (レス) @page40 id: d65177cced (このIDを非表示/違反報告)
しおぽんら(プロフ) - テトさんと同じなのですが、プリ小説という小説サイトで活動していますか?設定もセリフも同じなので気になってコメントさせてもらいました。リンクはこちらですhttps://novel.prcm.jp/novel/U7KPVPevcPuDxlQlBkXn (9月2日 17時) (レス) @page1 id: 535c2b64b5 (このIDを非表示/違反報告)
テト(プロフ) - 初コメがこんなのですみません。あの…プリ小説という小説で活動していますか?なにやらプリ小説内で先程こちらと似たような作品を見つけまして…もしかしたらこの作品がパクられているかもしれないのでコメントさせてもらいました (8月30日 15時) (レス) @page1 id: e3b6735391 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫もふお - 神作品ありがとうございますっ!!! (8月18日 12時) (レス) @page18 id: 9c4f5ea239 (このIDを非表示/違反報告)
未栄 - 最高すぎて鼻血出るかと思いました (8月1日 13時) (レス) @page40 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
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