第36話 ページ37
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ああ、判ってる癖に。
あの日から素知らぬ態度で接していた分が、今日になって膨らんでいく。
『まだ、家具も買ってない』
「じゃあ家具を揃えたら?」
『だっ、す、少し落ち着いてから』
「へえ、落ち着いたら云ってくれるって?」
少し意地悪で、でも優しい声が簡単に心も耳も擽ってしまう。
その位一緒に居て、その位私は____
『──判ってる癖に。』
あの時始まった辺鄙な想い
キッと隣を睨めば、得意げに微笑む中原さんがふっと息を吐いて「知ってる」と帽子を被り直す。
ああもう、何度見たこの仕草でさえも様になるから悔しくて
「だから俺はもう、Aを待つだけ」
このまま見続けては心が持たない、と目線を逸らしてみても勝手に浮かぶ中原さんの笑顔。
ああ、確かにあの時私は、家を吹っ飛ばされた代償に、思い出も時間も家も、全部弁償してよと重圧を掛けたけど。
「約束な」
ただの口約束。
誰も知らない、犯罪混じりの約束。
恥ずかしくて云えないのは、大概中原さんのせいで
『_____でももし、……もし家具を買って、家に住んで落ち着いて、それでも私が約束を忘れていたら』
それでも切り離されなかったのは、何かしらの“ 契約 ”があったから。
家が吹っ飛ばされたあの日からそれは変わらない。
だけどそれが終わって、家や家具の契約を終えてそれぞれの家に帰ったら。
中原さんはあのマンションへ、私は自分の家へ。
「……まあ俺は、きっと堪らなくてAに会いに来る。
そン位にはAに執着してる。…好きなンだよ
だから忘れるなんて有り得ねェけどなあ」
けど_____、と中原さんは続ける。
よくそんな事恥ずかしげもなく云えますね、なんて、徐々に顔を覆う私には云えなかった
「けど、それでもAが返事をしてくれなかったら
家を吹っ飛ばしに会いに行くから、」
なんて。なんて莫迦な発言だと思った
こんな一軒家吹き飛ばすなんてどうかしてる。
けれど、
『だったら、……もう少し綺麗に飛ばせる様にしてくださいよ』
笑うしか無いじゃないか。
「おう、待ってろ」
だって中原さんが笑うから。可笑しくて、吹き出してしまう
変なプロポーズ____________。
最初から今日までずっと変な関係だけど。
ずっと変な男だ変な人だって思ってたけど
好きになった時点で、もう私の負けだった。
『好きです、中原さん』
「ああ俺も、_______愛してる」
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レインボー文豪娘 - このぶっ飛んだ始まりと、「また家を吹っ飛ばしに行く」というセリフが素晴らしすぎました。最高でした。 (4月14日 22時) (レス) @page40 id: d65177cced (このIDを非表示/違反報告)
しおぽんら(プロフ) - テトさんと同じなのですが、プリ小説という小説サイトで活動していますか?設定もセリフも同じなので気になってコメントさせてもらいました。リンクはこちらですhttps://novel.prcm.jp/novel/U7KPVPevcPuDxlQlBkXn (9月2日 17時) (レス) @page1 id: 535c2b64b5 (このIDを非表示/違反報告)
テト(プロフ) - 初コメがこんなのですみません。あの…プリ小説という小説で活動していますか?なにやらプリ小説内で先程こちらと似たような作品を見つけまして…もしかしたらこの作品がパクられているかもしれないのでコメントさせてもらいました (8月30日 15時) (レス) @page1 id: e3b6735391 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫もふお - 神作品ありがとうございますっ!!! (8月18日 12時) (レス) @page18 id: 9c4f5ea239 (このIDを非表示/違反報告)
未栄 - 最高すぎて鼻血出るかと思いました (8月1日 13時) (レス) @page40 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
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